思いがけないプレゼント〜Nくんのケア滞在記

先週、自然療法プログラム(通称ケア滞在)を卒業したNくんが、1ヶ月間の滞在を振り返り、体験記を書いてくれました!

 

「ケア滞在記」

ケアを受けるまでの経緯

元々、不眠体質であったが、不眠の症状によって仕事や日常に影響が出てくるようになり、2006年2月に病院受診、睡眠導入剤を処方される。それ以来睡眠導入剤を常用する事はなかったが、「睡眠のリズムが悪くなり、睡眠障害になる→睡眠導入剤でリセットする→元にもどる→しばらくして睡眠障害になる 」の循環を繰り返していた。睡眠導入剤の副作用として頭が締め付けられる感じがしたり、日中のだるさがあったり、睡眠導入剤を服用した後、一時的に記憶喪失になることがあったりと、薬の弊害を薄々感じていながらも、社会生活を続けるために薬に頼らざるを得ない状況が続いた。

2014年6月中旬頃から、それまで頓服として服用していた睡眠導入剤が手放せなくなり、導入剤がないと寝られない状態になる。今までこのような状態に成る事はなかったのでインターネットで調べてみると、向精神薬の薬害問題がある事を知る。医者は向精神薬を処方する事は出来るが、辞めさせる方法は知らない。向精神薬を辞めたくても、辞められないで苦しんでいる人達が大勢いるのだが、テレビ、新聞は積極的に報道しようとしない。

向精神薬の薬害を知るにつれ、薬を断とうと思うが、もがけばもがく程、症状は悪くなっていく。自分が今どのような状態にいるのか知りたくて、わらにもすがる気持ちでインターネット検索するが、ほとんどが不安で症状をこじらせ、不安を増大させるような情報ばかりであった。

そのような中、以前から定期的に目を通していた木の花ファミリーのいさどんブログを繰り返し読む事により精神を落ち着け、開き直る事により薬を断つ事が出来た。

2014年8月に仕事を退職。今後の事を考え、薬を断つ事は出来たが、根本の精神構造を変えなければ同じ事を繰り返してしまうと思い、木の花ファミリーの自然療法プログラムを受ける事を検討するが、苦手の集団生活に飛び込む事に対する躊躇から一歩を踏み出せないでいた。そのような中、家族の大病があり、それを自分を建て直すためのメッセージと受け取り、自然療法プログラムを受ける事を決意する。

 
ケア滞在中

自分は重篤な症状ではないのでケア滞在するに値するのか(自分視点の決めつけ癖ですね)という揺らいだ気持ちと集団生活への緊張感を抱えケアをスタート。初日の面談で最初の一週間は自由に過ごして良いとの事だったが、木の花での生活に慣れるためと、目の前の事に集中してエネルギーをきちんと使おうという思いから初日から作業にでる。

最初の一週間は緊張感から寝付けない事が多かったが場所のエネルギーと食事のおかげで不思議とエネルギーは有り余る感じだった。

一週間面談では、心の癖や出てきた現象に囚われ、その囚われを基に思考をぐるぐる回している事を指摘され、普段している思考が自分視点か客観視点かを仕分けする事を課題として与えられる。

その結果、自分に客観視点が殆どなく自分視点ばかりである事。自分視点とはそれが事実であり、自分にとって良いものという思い込みであるが、少し掘り下げて見ていくと、事実でもなければ、自分にとって良いものでもないという気付きを得る。

その気付きを得てから、自分の心の構造や癖がより明瞭に見えてきたり、今まで無自覚に心の癖に囚われていた状況でもその事に気付き、徐々に軌道修正できるようになっていく。

二週間面談では思考をぐるぐる回している状態から一歩出て外に出す事が課題として与えられる。その一環として大人ミーティングで心のシェアをする事や発言する事を提案される。大勢の前で発言する事は自分の苦手な事であり今まで避けてきた事であるが、越えなければならない壁であるので、実行する事にする。二週間面談の日と次の日に大人ミーティングで心のシェアをし、その場でフィードバックを貰い、新たな視点を得る事になる。

大人ミーティングで発言する事により客観的視点を貰い、大勢の前で発言する事に対する自信を少しずつ積み重ねる事が出来た反面、反動で滞在スタート時から続いていた不眠症状が悪化。殆どまる二日眠れない状況になり、サポーターのひろっちに相談。

急遽面談を持つ事に成る。面談では、人間眠れるようになっている。眠れないならずっと起きている事を提案される。いさどんの確信に満ちたアドバイスに背中を押され、それまでのネガティブスパイラルにはまりこんでいた状態から180度転換し楽観的に状態を受け入れる事が出来るようになり、その日のうちに眠れるようになる。また、長年思い悩んでいた睡眠障害の解決の糸口となる出来事であった。

三週間面談では安定してきた睡眠を継続させる事、自分の心の癖を持つにいたった原因を自己分析する事を課題として与えられる。自己分析したところ自分の狭い世界観(人間観)が心の癖を生んでいる事に思いが至り、世界観(人間観)を広げその事を基に生きていく必要を感じ、その入り口に立たされている事を実感する。

四週間面談ではおよそ7割方の改善が見られたため卒業が決定。1月20日に卒業コンサート、21日に卒業する。

 
ケア滞在を振り返って

とかくすぐに結果を求めがちな僕は、自分視点でみてケアの改善が進んでいない事や受け取った情報を消化しきれていない事に焦ったり、どうやったら自分をコントロールできるだろうかとテクニック的な事に目がいきがちでした。そうやって相変わらずエネルギーを空回りさせ、浪費させている様は傍から見れば、さぞめんどくさく映ったかもしれません。

一方で、木の花から帰ってきてもまだ自分の中に持続しているエネルギー感は何だろうと思い、考えてみると責任という言葉が浮かんできました。

なんとも自分にそぐわない言葉ですが、どういう事かというとケア滞在中に与えてもらった有形無形のあらゆる事をきちんと実らせて他者に与えられるようになろうという事です。そのモチベーションがエネルギーとして自分の中にあるのを感じます。

考えてみればこのような事は人の輪の循環の中にいれば普通に体感する事かもしれませんが、自分にはそれが欠落していたのだと思います。

ケア滞在中に与えられた課題は僕のそのような有り様を見抜いていたいさどんが、循環の中にいる事の大事さに気付かせるために投げかけた物だったと思います。そのように思いが至り、僕は思いがけず大事なプレゼントを貰った気分です。

最後に数々の絶妙な気付きを得るきっかけを作ってくれた、主治医のいさどん、ケアコーディネーターのようこさん、サポーターのひろっち、メンバー及び長期滞在の皆様、木の花の建物や畑や富士山や自然に感謝します。本当に有難うございました。

どんど焼きの日 宮ノ下広場にて
どんど焼きの日 宮ノ下広場にて

 

 


病は気からではなく、病は誤解から! ~自然療法プログラム・Nくん物語

Nくんが初めて木の花ファミリーを訪れたのは、今から3年前のことです。当時、Nくんはヘルパーとして1週間木の花に滞在しました。実はその以前から精神科に通い、不眠のために睡眠薬を飲んでいたNくんは1年くらい前から自然療法プログラムを受けることを考えていました。そして、今年の3月に40歳を迎えるNくんは自然療法プログラムを受けることをついに決意し、2015年12月16日いさどんの面談を受けたのです。面談の際、いさどんはNくんにこう伝えました。

いさどん:
あなたは長男症候群ですね!あなたは精神が長男ではないのに、長男としてのプレッシャーを受けて育ってきました。そして、両親からの期待に応えようとして、そのことに対する臆病さや自信のなさも今の状態をつくっています。

まず、あなたの性質を紐解くと、臆病で心を外に出さず、秘めている状態で、それを外に悟られないように警戒しているのですが、外からはそれが丸見えになっています。このような状態だと、あなたは一生懸命自分を守っているつもりなのかもしれませんが、それではまわりからの印象も良くありませんので、社会生活は難しいですね。あなたの地球暦を観ると、理想があって能力は高いのですが、頭で考えることと行動のバランスが取れていません。自分はこうしなればいけないという心がありながら、それをしないのです。

一番はもっと自分を知ることです。今、あなたはネガティブに湧き出した思考をベースに考えをまわしていますが、これからはそれをポジティブに思考し、生かしていくことです。

あなたは薬漬けになっているわけではありませんし、精神状態は重度ではありません。ただ、これまでのここの取り組みからすると、症状が重く現状にこりごりしている人のほうが改善は早い傾向があります。逆に、症状が軽く危機感のない人は、その状態を長引かせるのです。そこであなたの意志が重要になってきます。ですから、そこを踏まえてこちらもその意志を刺激しながらサポートしていきます。

40歳は、人生において折り返し地点であり、大切なポイントです。来年3月に40歳を迎えるあなたは切り替えの良いタイミングでこちらに来たのですから、ここでけじめをつけて取り組んでいけば、将来笑って、「あんなときがあったね!」と言える日が来ると思いますよ。

――

いさどんの話に深く頷きながら「そのとおりです」と言っていたNくん。そして、昼夜逆転の不規則な生活を改善し、人前で話すことや苦手な集団生活を克服しながら、今まで空回りしていたエネルギーを使いきる毎日を送りたい、ということで1週間後の12月21日、ケア滞在をスタートさせたのです。

ケアスタート面談の際、いさどんからは毎日日記を書くことがテーマとして与えられました。いさどんは、「日記というと出来事だけ書く人もいますが、心の改善が目的ですので、なるべく自分の想いを中心に書いていくといいですね。子どもの頃からの良かったこと・悪かったことを振り返る自分史を書いてもいいですよ。あなたが吸っているタバコについても、やめなさい、とは言いません。ただ、あなたの心が安定し生活リズムが改善されれば、タバコは自然と要らなくなります。そこを目指していきましょう」と伝えました。

これまで1年以上薬を飲んでいなかったNくんでしたが、お守り代わりに以前精神科でもらった睡眠薬を持参してきたことをいさどんに伝えると、いさどんはNくんにこう伝えました。

いさどん:
今の状態が改善されるということは薬が不要になることです。具合が悪くなるたびに薬を飲んでしまうと、いつまでたっても薬に頼らないといけません。木の花の自然療法プログラムの目的は、心身の健全を取り戻すことが最優先にあるのですから、物理的な作業をすることを気にせず、眠れないときは起きていればいいのです。

Nくん:
眠れないということはちっぽけなことだと判断する人もいるかもしれませんが、僕の中では長年の大問題なのです!

いさどん:
そういった思考状態を抱えていくのが病気の状態です。あなたは長年そのような考えのもとに生きてきたのですから、今の状態を改善するためには、今までのあなたの考え方を継続していたのでは改善できません。だから、今回の取り組みを機会にして、人の考えを取り入れていってください。

Nくん:
はい、そのために僕はここに来ました。

いさどん:
睡眠のメカニズムを紐解くと、人間は必ず眠るようになっています。そのためには、昼間に良い時間を送ることが大切です。ですから、最初は少し調子が悪くても、なるべく昼間に起きているようにしましょう。部屋にいてもホールにいてもいいですし、本を読んだり散歩をしてもいいのです。もっと調子が良くなればキッチンの作業を手伝うこともできます。これは作業をすることが目的なのではなく、一日の送り方のトレーニングなのです。さらに調子が良くなれば、天気が良いときには畑作業に出てもいいですね。

人間の体は、昼間活動して、夜眠るようになっています。夜眠れないということは、夜に神経が興奮しているので眠れない状態になっているのですが、昼間にある程度充実した時間を送れば、自然と夜に眠くなるのです。眠れないということは、体が今眠りを必要としない状態になっているのですから、起きていることがそれに対する適切なる対応です。起きていれば、どこかで必ず眠くなるものなのです。そこで昼夜逆転にならないように、夜眠れなくても、昼間はなるべく眠らないようにすることです。そうすると、昼間眠くても眠らなかった分の睡眠欲求が、夜に移行するのです。

このように合理的に考えていくことが大切です。人間の体は約束どおり、夜に眠るようになっているのですからね。それが何かの異常でそのリズムが壊れているのです。人の健康な状態は、太陽のリズムとともに活動し、月のリズムとともに眠るだけなのですから、非常にシンプルです。ところが、あなたは眠れないことに対して余分な思考をたくさんまわし、事をややこしくしています。話はなるべくシンプルにしましょう。あなたがこれを大問題と言うのも、睡眠に対して複雑に考えすぎているからなのです。しかし、そんなことはありません。夜は眠って、昼間に起きているというとてもシンプルなことです。ここには昼間の送り方を健全にする環境があるのですから、今あなたはそれが大問題だと思っているとしても、いずれそれが解決されていくイメージを持って取り組んでいきましょう。

ここではたくさんの人をケアで受け入れてきましたが、睡眠薬を飲んでいる人でもだいたい1週間もすれば、睡眠薬なしで眠れるようになります。早い人なら、こういった話を聞いただけで、そうですねと言って、睡眠薬を預ける人もいるぐらいです。あなたは今、睡眠薬を飲んでいるわけではないのに、すでに悪いことが起きることを考えているのです。

Nくん:
そうです!眠れなくなったらどうしようとか、また鬱になるんじゃないか、パニックになるんじゃないかと考えてしまうのです。

いさどん:
それは眠れなくなってから考えればいいことで、眠れなくなる前から考える必要はないのですよ。

Nくん:
それはわかっているのですが・・・。

いさどん:
「わかっているけどやめられない」状態が現在の症状なのですから、あなたはわかっていてやめられないことに固執しているのです。それは、あなたがそういった人生を自分で選んで送っていることになりますね。

Nくん:
自分で好きで選んでいるのですか???

いさどん:
そうです。前回の面談でもあなたの性質を伝えましたが、それに対してあなたは頑なに、「自分はこういう状態なのだ」と決め付けているところがあります。それについては、「あなたにはそういう性質がありますよ」とは伝えますが、それをやめなさいとは言いません。ただ、それが今の症状を生み出しているのですから、いずれそれは取り組むべきことなのです。「わかってはいるのですけど」と言う限り、ずっとその状態を続けていくことになりますからね。

Nくん:
僕はそれを好きで選んでいるのですか??

いさどん:
人は、今の自分の状態が本当に嫌だったら、誰かに言われなくても、自分でやめていきます。たとえば、お尻に火がついたら、何とかして消そうとしますよね。それを、余裕がある人は「この火を消すにはどうしたらいいのでしょうか?」とか、「なぜ自分のお尻に火がついているのだろう?」と考えているような話なのです。

今現在も、あなたは頑なに、「僕は好きでやっているのですか?そんなはずはない」とわたしの話を受け取ろうとしていません。

Nくん:
僕は嫌で仕方がないのですが、それでも好きということなのですか??

いさどん:
好きという言い方をすると捉え方を勘違いするかもしれませんが、そういった状態であることがあなたらしいのです。逆に言うと、そういった状態がすべて改善されたあなたが未来にいるとしたら、今、そこへ行くことはある意味あなたにとって未知なることなので、恐怖でもあるのです。あなたは長年今の自分を生きてきたので、今の自分が自分らしいと思い、それに慣れてしまっています。あなたにとってそこから生まれる現象は嫌なことでもあるのですが、そういった人生をずっと生きてきたので、それが改善された状態の自分が考えられないのです。しかし、「新しい自分になりたいですか?」と質問されると、「なりたいです」と答えますよね?

Nくん:
はい!

いさどん:
しかし、あなたは本当にそうなれるかどうか疑っていますし、「新しい自分になれた時に自分はどうなるのだろう?」という考えもどこかにあるのです。ですから、今の自分は嫌なはずなのに、今の自分が自分らしくて心地が良い状態でもあるのです。それは言い方を変えると、今の自分が好きとも言えるのです。あなたは新しい自分を想像できませんよね?

Nくん:
はい!それは想像外のことなので、全く想像できません!

いさどん:
そうであるならば、あなたは今、新しい自分を想像することはできないはずですよね。それなのに、あなたはネガティブな思考をまわし、想像できないはずのことにエネルギーを消耗しています。新しい自分はそういった余分なエネルギーを使わない人です。ですから、今は観えない未来の自分を、先に考えてはいけないのです。それは、「先に行ったら新しい自分に出会うのだろう」というぐらいのスタンスでいるとちょうどいいのです。

Nくん:
まず、僕は何をしたらいいですか?

いさどん:
まず朝起きて・・・

Nくん:
(いさどんの話を遮って)でも、眠れないかもしれないです!

いさどん:
なぜ先にそのようなことを考えるのですか?早速、余計な思考をまわしていますよ!今は夜なのですから眠ってください。まずは、良い生活を送ろうとするのではなく、良くても悪くても何でもいいから、新しい環境で一週間を過ごしてみましょう。あなたは、取り組む限りは成果を残さないといけないとか、今晩眠れなかったらどうしよう、と早速、余計なことばかり考えています。そのメカニズムを伝えても、自動的に考えてしまう性質が今のあなたにはあるのです。あなたは余分な思考を素早くまわしていますが、それはある意味能力が高いのです。ただ、頭は使えているのですが、それはエネルギーを無駄使いしている状態なのです。とりあえずは、自由に最初の一週間を過ごしてみましょう。

――

ケア滞在初日の夜は早速4~5時間眠ることができたと喜んでいたNくん。睡眠障害の改善と農作業体験を目的にケア滞在をスタートしたNくんは、早速初日から畑で農作業をし、その後も夜に途切れ途切れの睡眠をとりながら昼間は農作業をして過ごしました。そして1週間が経ち、1週間面談の際にいさどんはNくんにこう伝えました。

いさどん:
あなたの日記を読むと、自分のことをよく振り返っていることは伺えますが、自分のことに興味が行き過ぎてしまい、自らの思考に囚われている状態です。あなたは頑なに現在の自分を守り続けているのですが、そういった自分を超えていくことが今後の課題です。

そのためには、もっと広い視野のもとに世の中の情勢にも興味を持ち、自分のことについても客観的に捉えられるようになることが大切です。たとえば睡眠については、睡眠が不十分であればどうなるのか、と冷静に考えれば、それで死ぬことはないことがわかりますね。そうやって今の囚われから離れていく作業がこれからのテーマです。

あなたが不眠症で眠れないのは、ただ何も考えずに眠れないのではなく、たくさん思考をまわしていることによって興奮状態になり、眠れないのです。今まで眠れないことがあなたにとって大問題であったとしたならば、そのテーマについてはひとまず置いておき、今はもっと他のことに目を向けていけるといいですね。つまり、思考の中身の転換です。ですから、今のあなたの状態では薬を飲んでも意味がありません。それには、今の思考を分析していき、客観的視点で自分の状態を理解することが必要なだけなのです。

実は、心の問題というのはたちどころに治せるものです。今の状態を引き起こした自らの性質に気付き、それをやめるだけなのです。ですから、それは瞬間芸でできるのです。ところが、自らと向き合わない限り、十年経っても、それこそ死ぬまで治らないことにもなるのです。今のあなたは自分と向き合ってはいるのですが、常に現在の自分を肯定している状態なので、それでは今の自分を超えていくことはできません。そこでは頑なに囚われている自分の性質と向き合う必要があるのですが、あなたは起きてくる出来事や思考の内容に視点が向いてしまっています。ですから、そこでは根本的な原因のほうに興味を持っていく必要があるのです。

前回のケアスタート面談では、あなたが自分の状態を訴えることを優先していたものですから、このような話はできませんでした。しかし1週間経って、この話ができるようになりました。これは進歩しているということですよ。それを評価したらいいのです。

――

いさどんの話を聞いていたNくんは、「僕としては進歩しているのかどうかわからなかったのですが、それが客観的視点なのですね」と言いました。そこで次の1週間は、自分視点について振り返り、自分に客観視点があるとしたらどこでどのように使っているのかを観察することが課題として与えられました。

その後、Nくんは昼間は農作業をし、夜には6時間眠れる日があったり、なかなか眠れない日があったりしながら、さらに1週間が過ぎました。2週間面談の際、いさどんはNくんにこう伝えました。

いさどん:
あなたは頭の中で自分を分析することはできています。昨日の大人会議では皆で映画を観ましたが、あの時間は映画の話自体をすることが目的なのではなく、映画を通して今の社会や時代背景を観て、日常生活につなげていくことが目的だったのです。ですから、頭の中で考えたことが自らの日常生活に反映されることが大切なのです。たとえば学校の勉強は学校でするだけ、宗教に入ったら宗教活動をするだけで、それと日常生活は別ということでは意味がないのです。会社へ行って仕事をしても、日常生活は別ということになると、仕事でストレスがたまったら日常生活はそれを解消するためにあるという話になります。しかし本来、会社でストレスがたまったら会社で解決すべきですし、会社で培われたことは日常生活でも生かされていくように、人生すべてに共通して反映されることが大切なのです。

あなたは自分の頭で考えることが日常生活にどのような出来事として反映されていくのか、つなげて捉えていません。それは、思考がだらだらと巡っているだけの状態です。それではいくら考えても、それが日常生活には反映されず、同じ自分がい続けることになります。そこで、頭で考えていることを日常生活に生かすためには、それを皆に語り、フィードバックをもらいながら、客観視点を受け入れ、自分の思考がどのような現象を引き起こしているかに気付くきっかけにすることです。

そのために、次の1週間のテーマは大人会議で発表することです。そこでは日記の内容をシェアしてもいいですし、大人会議で語られていることに対して自らの想いを語ってもいいのです。それは今まであなたが避けてきたことであり、一番苦手なことでもあります。しかし、そこを超えないと新しい自分には出会えません。

そのことが大事だと気付き、普通にやれるようになると、このケアの取り組みも終了となります。そして、それをやり続ければ、そうすることが心地良くなるのです。心地良くなれば、それを積極的にやるようになります。それが新しい自分になるということです。

――

面談後、Nくんはサポーターのヒロッチに、「とりあえずこの面談の内容を大人会議で発表はしますが、毎日発表することはさすがにできません」と言いました。しかしヒロッチからは、「タバコについても、最初は0にすることはできないと言っていたけれど、いさどんのサポートのおかげでケアを開始してから11日目以降タバコなしで過ごせている。大人会議での発表についても、自分にはできないとすぐに決め付けるのは今までの思考パターンそのものなのだから、一日一日、目の前のことに集中して取り組んでみよう」と伝えられ、Nくんは早速大人会議で自らの想いを発表したのでした。

しかし、2日続けて発表した後、Nくんはヒロッチに「大人会議で発表することが心の負担になって、ここ2日間、夜なかなか寝付けませんでした」と伝えました。そして、その次の晩は一睡もできなかったとNくんはヒロッチに伝え、「いさどんからもらった課題は長期的に継続していくとして、眠れていない今の状況が辛いので、一度東京に戻ろうと思います」と申し出てきました。それを受けて、急遽いさどんと面談する場が持たれました。それはケア滞在を始めてから15日目のことでした。

いさどん:
あなたはケア滞在を始めてから、あなたの判断を超えた新たな視点をまわりからもらいながら今までの状態を改善してきました。しかし、今回東京に戻ろうとすることは、あなた自身の判断です。ここで自らの判断を超えると、自分が新しくなるのです。今のあなたの考えは理解できますが、今のあなたの判断は新しい自分につながらず、元の自分に戻ることになるのです。今、元に戻る力と前に進む力の胸突き八丁(意味:富士登山で頂上までの8丁《約872m》の険しい道・物事を成し遂げる過程で一番苦しい正念場)を迎えています。誰でもそこを通るのです。そこを越えて初めて、次の世界にいる新しい自分に出会えるのです。

タバコの話でも大人会議で発表することでも、こちらが薦めたことを最初あなたは抵抗していましたが、新たな考えを取り入れることによって次の段階へと進んできたのです。こちらからの投げかけがなければ、あなた一人ではタバコはやめられませんでしたね。今回、あなたは自分ひとりで判断し結論を出しましたが、そこを超えるためにこちらが手助けをする状態は同じです。

たとえば眠れないとしますよね。眠れないでいて作業に出るのが辛いということですか?

Nくん:
作業に出ても出なくても、辛いのです。どちらにしても眠れないことに変わりはないのですから。

いさどん:
では、東京に行くと眠れるようになるのですか?

Nくん:
まだこの場所にいることに緊張しているところがありますので・・・。

いさどん:
そうしたら、その緊張を抜く必要があるのです。今までのあなたの思考が今の状態をつくっているのですから、元の環境に戻れば、この2週間取り組んできたことを帳消しにしてしまいます。わたしにはこの取り組みに対する欲はありませんが、あなたがせっかく取り組んできたことに対して、もったいないと思うのです。

Nくん:
やってきたことがすべてご破算になるとは思っていません。

いさどん:
あなたは自分の見解がベストだと思っているのですが、今まで自分の見解で生きてきて自分を導いてこられましたか?

Nくん:
それはできませんでした。

いさどん:
だから今、そこを超えるチャンスなのですよ。眠れないということは、眠れないことに対して何か囚われの心があるのです。

Nくん:
それはすごくあります!

いさどん:
そこを突破していかないことには次へ進めないのです。それは場所を変えたからといって、思考の中にあるものですから、何か変わるわけではありません。

(Nくんが何か言いかけたことをさえぎって)あなたは今、わたしを説得しようとしていますか?

Nくん:
自分の見解を述べようとしています。

いさどん:
わたしはあなたのことをよくわかっています。あなたの今の状態もよくわかっています。それをわかっているからこそ、今を超えていくことが大事だと伝えています。あなたがこのような段階に来ることは最初からわかっていました。最初にあなたに面談したときに、あなたは治りますよと伝えましたね。治らないと思っている人はここで預かりませんからね。そこでイメージするだけの世界ではとんとん拍子で治るのです。それはなぜかというと、こちらの伝えるとおりに事が進むイメージだからです。ところが、実際にはこちらが伝えるとおりに皆取り組みません。そこでは自我が出てくるからです。その自分と向き合って、今までの癖を突破したときに初めて、回答が出るのです。これは薬では治せません。そして、今までもそうだったように、今までの自分に任せていても治りません。だから、人に委ねに来たのです。

今、あなたは自分の見解を述べようとしましたね。それは、「自分のことをわかってほしい」という心です。

Nくん:
そうです。

いさどん:
だいたい皆そうなのですから、そんなことはわかっています。ただ、代わってあげることはできません。その代わりに、あなたがそこを突破する智恵とサポートを提供しているのです。今回のことはある意味予定通りなのですよ。眠れない症状があるとしたら、その状況でやれるようにやっていくだけです。そこでは、あれをしないといけない、これをしないといけない、という想いは捨てていくのです。わたしはここでたくさんの事例に出会ってきましたが、そういった状態の多くの人は睡眠障害を持っています。そこで伝えることは、「人間の体は眠るようにできています。眠れないと言っても、眠れないことによって死ぬ人はいないのです。誰でも3日も起きていたら、絶対眠れます。だから、眠れない時は起きていればいいのです」と伝えます。

Nくん:
僕も最初にそう伝えられました。

いさどん:
眠れないことを嫌だと思うのではなく、眠れないなら起きている作業をするだけです。最初は睡眠が欠乏しているので昼間でも眠くなるとします。そこで昼間はなるべく起きていると、その眠いという負荷が夜まで持ち越され、夜になってから眠るのです。それを数回繰り返していくと、必ず夜になると眠くなります。ですから、本来、睡眠障害の改善はそれほど難しくありません。逆に、自然の摂理に反する異常な状態にもっていくほうが大変なのです。ですから、正常な状態に戻すことはそれほど難しくないのです。

ところが、それを邪魔しているのが、ああでもない、こうでもない、と考える人間の心です。そこで、邪魔している自分の心と向き合う作業をしていくのです。あなたはやっと今、その段階に来たのですよ。これは予定通りです。しかし、少し時間がかかりすぎていますね。通常なら、ここではだいたい1週間で多くの人が睡眠障害は改善されるのですが、あなたの場合は2週間以上かかっています。それはなぜかというと、最初の面談でも伝えたように、あなたの状態が重症ではないからです。あなたはうつでもなければ統合失調症でもありません。あなたは自分の精神状態がこの症状を引き起こしていることに気付いていません。それに自我がとても強いので、改善に時間がかかっているのです。もっと精神的に重い状態の人であれば、自我が保てず、自分の状態にこりごりしているので改善は早いのです。しかし、あなたは自分の状態に対して、まだ懲りていないのです。睡眠障害については懲りているかもしれませんが、自分の性格には懲りていないので、自分の見解を持ち出して訴えています。あなたは口では「もうこりごりです!」と言いますが、そのこりごりが足りないから、元に戻ろうとするのです。

うつで薬を飲んでいる人の場合、まず薬の影響を抜き、それからうつの症状を引き起こしている精神状態に取り組んでいきます。そして自己コントロールしていく段階に入るのです。あなたの場合は、その前段がなく、いきなり心のコントロールの段階に入ったのですが、囚われが強いと物理的な症状が軽くても、改善に時間がかかるのです。

だから、自分の心に向き合わないといけません。あなたは客観視点について学びましたが、今のあなたは全く客観視点に立っていません。自分の主張したいことだけを主張しているのですからね。自分をしっかりと観て、自己コントロールできるようになって初めて、客観視点は有効なのです。酷かもしれませんが、そこに取り組まない限り、これは超えられません。先程、胸突き八丁と伝えましたが、ここを越えられたら頂上ですよ。

Nくん:
わかりました。眠れるまで起きています。

いさどん:
それで心を病む必要はないのですよ。今はそこを超えていく段階だと思って、談話室で本を読んでいようが、一晩中テレビを見ていようが、座禅を組んでいようが、何をしていても構わないので、眠れるまで起きていればいいのです。方法は簡単です。しかし、そこで何とか眠ろうと思ったら難しいのです。

逆に眠れない人には、こう提案することもあります。「眠れないことを逆手にとって、一体どのくらい起きていられるのか、チャレンジしてみましょう!」そうすると、結構すぐに「眠れました!」と言ってくる場合が多いのです。そういったことを楽しめるぐらいの余裕があると、本当はいいのですよ。

Nくん:
がんばります!ありがとうございました。

いさどん:
別にがんばらなくてもいいのです。ただ眠くなるまで起きていればいいだけですよ。

――

その翌日の大人会議で、Nくんは嬉しそうにこう発表してくれました。「面談でいさどんが伝えてくれたことで、眠れないことへの囚われの状態から心が解放されました。いさどんの確信ある言葉の力に後押しされ、眠れないなら無理に眠ろうとせずに時間を過ごそうというつもりで布団の上でインターネットをしていたら、睡魔が襲ってきたのです!結局1時頃には寝付くことができ、そのまま眠ることができました!10年ほど不眠で苦しんできたことを考えると、驚きの体験です!」

そんなNくんに対し、皆からは大きな拍手が送られました。その後も、Nくんは夜布団に入ってから30分から1時間ほどで眠りにつくようになり、睡眠がしっかりとれたことで体調も良くなり、精神的にも良い状態で過ごすことができるようになりました。まわりからも「表情が良くなってきたね!」「捉え方が180度変わると人はこのように変われるんだね!」と伝えられるようになりました。

そして、2日後の3週間面談の際、Nくんはいさどんにこう伝えました。

Nくん:
2日前、急遽いさどんに面談してもらってから、いつかは眠れるのだということがわかってきました。今日眠れなくても、明日眠れなくても、次の日ぐらいには眠れるだろうという安心感が出てきました。その安心感が薬になっているように感じていて、前ほど眠ることに対して思い悩まなくなりました。

いさどん:
以前も伝えましたが、人は眠るようにできているのですよ。

Nくん:
前回の面談が僕にとって大きなターニングポイントになったと思います。以前とは全く違います。

いさどん:
ということは、心の問題だったということですね。

Nくん:
はい、心の問題です。これまでは、しっかりと自分に向き合っていなかったと思います。

いさどん:
そうやって、ひとつコツを覚えましたね。しかし今はまだ、睡眠に対して強く意識が向いています。眠れるかどうかを常に意識しているのは異常な状態なのですから、それが不要になることが大切です。そのために次に取り組むことは、なぜ自分がこういう状態になってきたのかを分析することです。その多くはあなたの考え方の癖なのです。その自己分析に取り掛かることが次の課題です。

たとえば、あなたにはそのつもりがなくても、あなたはすぐに人と議論する傾向があります。他者の意見が自分の意見と違うと、そうではなくてこうなのです、と自らの主張を理解してもらおうとする傾向があるのです。そういった意味では柔軟ではありませんね。

Nくん:
自分のことは頑なだと思います。それはここに来て、初めて気が付きました。ここに来るまでは、むしろ自分は他人の意見を柔軟に取り入れているほうだという思いもあったのです。

いさどん:
ハッハッハ。そこで、自分の癖が出る前に、自分の心がどういう構造になっているのかを知ることが重要なのです。それと、あなたは今まで生きてきて、とても身近なことに意識が行き過ぎていました。それは、自分が眠れるかどうかに意識が強く向くくらい、身近だったのです。

今後あなたがどのように生きていくのかはあなたにとって大きなテーマですが、本来自分がどう生きていくかは、自分がどういう性質を持ち、どのように生きているかによって、自然に縁ができて現れるものなのです。ですから、未来についても改めて考えていくことが大切だと思います。本当のあなたらしい生き方があると思うのです。そして、それを見つけることは重要なことです。自分自身を知って、天命を生きたら、充実した希望ある人生になりますね。あなたの地球暦を観ると能力は高いのですが、今まではそれが秘められてきました。それを生かしていけば、食うがためだけに職業に就くのではなく、もっと自分らしく生き生きと、世の中の役にも立てる生き方に出会えることでしょう。

今、方向性は観えてきているので、今の延長にまず健康になりましょう。それは、意識して眠るとか、意識して自分の癖を観るということではなく、自然体で眠れて、自然体で自分の癖に対してチェックできるようになるということです。次の1週間でそこに努めていき、70%それが定着したら、卒業になります。

――

その後の日記にNくんは、こう書いていました。
「自分の心の癖に気付くようになったが、その対処法が心の癖の延長線上になっている。僕がよくやる心の癖として、自分がまわりから排除されているのではないか、人から変に思われているのではないかと思い、その思いに対してまたやっていると自罰的になる。自分の外の世界に対する不信感は、自分に対する自信のなさの反映。自己イメージが不信をベースにしたやさしくないものなので、まずそこを変える必要がある。」
「眠れないことに対する不安感はだいぶ和らいだが、眠らなければならないという思い込みが強い。夜眠くて、朝起きなければならない、さもなければ次の日の作業が辛くなってしまうだろうという思い込み。」
「僕は自分視点の思い込みをして、それで自分を苦しくさせていたようだ。そのようなことがあまりにも多すぎる。病は気からではなく、病は誤解からだと思う。」
それに対し、いさどんは「面白いです!人は相手を観ているより、自分の感情を観ていることが多いのですが、そのことがわかってくると、人は初めて自分を見つめるようになります。人生は階段を昇るように上に向かっていくものです。それは、仕込みのための期間と一気に成長する時が交互に訪れます。あなたは今まで仕込みの期間を長く取ってきたと思えば、これから一気に上昇するチャンスだということになりますね。そして、これからまた新たな仕込みの期間が来ますので、自らに囚われないで、常に学んでいく姿勢を忘れないで取り組んでください。これからの姿勢が特に大切なのです。ここに来た当初からすると新しいあなたがいますね!」とコメントしました。

そうして、ケア滞在がスタートしてからちょうど4週間が経った2016年1月18日、いさどんからNくんに1月20日をもって卒業とすることが伝えられました。その際Nくんは、「まわりからのサポートやいさどんから課題をもらいながら、70%までは来られたと思います。残りの30%は自分の本質とどう向き合うかだと思います。自分がなぜこのように生きてきたのかと考えたときに、今まで生きてきた中で無自覚に受け取ってきたものが大きく左右していると思うのです。たとえばそれは両親の価値観であったり、先祖代々受け継いできたこと、さらに学校教育で受けてきたことが自分の人格をつくってきたと思います。そのように与えられたものを自分の癖で受けてきて、本当は居心地が悪いのに、自分の癖からすると無理やり居心地が良いと思い込むようにしてきました。これからも今までの価値観や世界観で生きていれば、また同じ世界にい続けることになるので、これからが本番だと思います」と語りました。

そして、1月20日の卒業コンサートの際、Nくんはこう皆に伝えました。「今回のケア滞在を通して、いろいろな気付きやサポートなど、皆さんからありとあらゆることをいただきました。その恩返しは、いただいたものを自分の中に留めておかないで、人に与えられる人間になることだと思っています。そのためにはやることがたくさんあると感じています。これからもよろしくお願いします。」

人は一生自らと向き合っていくものなのですから、この物語に終わりはありません。「病は誤解から!」と気付き、人生の胸突き八丁を乗り越えたNくん物語は、これからが新たな章の始まりです。

 

 


木の花ファミリーに滞在して 〜 批判やゴシップについて思うこと

今月自然療法プログラムを卒業し、先週末の夏祭りに遊びにやって来たみのるんは、木の花メンバー宛の手紙を読み上げると同時に、「一般の人たちにも伝えたい」と言って以下の文章をシェアしてくれました。

一昨年、ファミリーを離れた元メンバーが事実を歪めた情報をインターネット上に掲載したことを発端として、木の花ファミリーは事実を知らない人々から一部ネット上でバッシングを受けたり、週刊誌にゴシップ的に取り上げられるということがあり、ファミリーを問題視したりカルト団体と揶揄するようなサイトは現在も存在しています。私たちはこれらの批判に対し、それは事実ではないことや、真実が何であるかを包み隠さずにお伝えしてきましたが、収まることのないネット上の暴力に為す術はなく、ただ、これからの時代にとって大切だと信じる生き方を日々実践していこうと思っています。
みのるんはそれらのサイトを読み、湧き上がる想いを綴ってくれました。
 
■     ■     ■
 
私は、木の花ファミリーが社会貢献の一環として実践している「自然療法プログラム」を受ける為、およそ1ヵ月半、木の花ファミリーに滞在させていただきました。

木の花ファミリーに来る前にブログや動画などを見て、木の花ファミリーとはどういったところなのか、興味や不安も入り混じったような気持ちで訪ねさせていただきました。ネット上には、さまざまな意見や感想もありますが、私が滞在中を通して感じたこと。

それは一言で言うなら、「とても、良かった!」ということ。

そして、「世の中が、木の花ファミリーが実践している精神性、生き方に追いつけていない」ということです。

「百聞は一見にしかず」というように、様々な人の意見も感想も、自分が実際に見て感じて初めて分かることが多くあります。残念ながら、人はゴシップや第三者の意見に惑わされやすい生き物かも知れません。

それ故に、私が感じた何より残念な事が、「自然療法プログラムを受けることで治る可能性のある人、持続可能な生き方を模索している人達が、心無い記事や意見によって、治る道や、新たな生き方を見つける道を阻まれている」ということです。

私が木の花ファミリーに支払った費用は1日3240円(宿泊費、食費、洗濯代などを含む)でした。私の場合は、更に事情があって、別風呂まで準備してもらいました。実経費を差し引けば木の花ファミリーにとっては、ボランティアそのものです。

恵みいただきますの料理
恵みいただきますの料理

木の花ファミリーでは月に一度の「恵みいただきます」というレストランが催されます。近隣、県外の方など一般の方が多く来られます。その料理の提供内容に比べ、頂く代金は、1000円(65歳以上と障がいをお持ちの方は500円)と安すぎなのです。

「自然療法プログラム」も「恵みいただきます」も金銭が目的ではありませんでした。私が感じたのは、メンバーと訪問者の心と心の交流、人として成長していくためだと感じました。

私は車で外出すること、散歩することも自由でした。もちろん病院や歯医者も自由に行きました。夜の大人会議はメンバーも含めて出欠席自由です。滞在中、強制される行動は一切ありませんでした。私は、毎回参加させていただき、発言させていただく機会もありました。

プログラムの内容は、私の場合、自由に日記を書く事と、週1回の面談、つまり人生を振り返り、今の自分の心を見つめる事でした。客観的に事実を捉え、自分自身の姿や癖を知ることでした。それによって、私は被害妄想がある事や、心の癖、物事を曲がった捉え方をしている自分の姿を知ることができました。

誰に強要されたことでもありませんが、見たくない自分や、見えない自分と向き合うことは、時に苦しいことです。しかし、自分という狭い枠を知ることや、癖を知ること、客観的に自分を観られるようになることで、心と身体が回復していく現実に驚かされました。

木の花ファミリーが何故「自然療法プログラム」や「恵みいただきます」、持続可能な自給自足的生活をしているのか。

金銭、注目、名誉、名声、権力が目的になりがちな現代社会にあって、少なくとも、生きようとしても、生き辛さを感じている人達に、崩壊しかかっている今日の経済社会に先行き不安になっている人達に、新たな道を見出したいと思って模索し続けている人達に、「こんな価値観や生き方がある」という、空論でない実際を示すためだと思いました。

「他者の喜びを自らの喜びとする生き方」「地球環境にとって持続可能な豊かな生活」を現実として実践している場所が、木の花ファミリーです。

私が、この滞在を通して伝えられることは、
「希望ある、持続可能な生き方がある」
「本物は自分の心と身体で感じられる」
「自然療法プログラムは、とても良かったよ」ということです。

同じ時代を生きる同じ人間として、少しでも、日本が、地球が良くなりますように。

この文章を読んで下さった一人一人の心の直観に届くことを願い、書きました。

 

自然療法プログラム卒業生たち(前列左から3人めがみのるん)
自然療法プログラム卒業生たちと一緒に(前列左から3人目がみのるん)

 

 


みのるん物語1 〜 チャンスのヒビキ♪

木の花ファミリーの自然療法プログラム(通称ケア滞在)では、滞在者は定期的にケアのメインサポーターであるいさどんと面談をします。今月ケアを卒業したみのるんといさどんとのやり取りは、その都度「いさどんのいただきます人生ブログ」にて公開されていましたが、改めてその全容をお伝えします。日に日にアトピーが良くなっていったみのるんの歩みを、どうぞご覧ください!
 
■     ■     ■
 

昨日から、
自然療法プログラムをスタートしたみのるん。

面談の際、いさどんから、
「アトピーになるあなたの中には、
アトピーになる細胞のヒビキがあるのです。
そのヒビキをアトピーではないものにしていくことが大切ですね」と
伝えられたみのるんだが、
「そうですね。
ただ、自分ではどうしたらいいのかわからないのですが・・・。」

そこで、
いさどんはこう語った。
 

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
 

たとえば、
うつ病の人はうつ病のヒビキを持っています。

がんの人はがんのヒビキを持っています。

最近、きょうこちゃんが子宮頸がんを持っていることがわかったのですが、
僕は前から
「あの人はあやしいな~」と思っていました。

それで、
「お医者さんへ行ってきたらいいよ」と伝えていたのですが、
そのときはまだ、
「今はグレーですね」と言われていたらしいのです。

そして最近になってから、
きょうこちゃんがまた具合が良くないと言っていたので、
「お医者さんに行っておいで」と伝えたら、
早速お医者さんのところに行ったきょうこちゃんは、
ステージの3か4だと伝えられたのです。

でも、
きょうこちゃんの心には覚悟がないから、
きっと自分ががんだと聞いたら、
それこそ、が~ん!!!となって、
「わたしは死ぬのかしら?」と思うだろうと
僕は思ったのです。

僕ならば、
「これはチャンス!!」と思って、
「よーーし!!切らずにこのまま行ってみよう!!!」となったら、
がんのほうが、
「そんな人のところにいたくないよ!!」となって、
いなくなったりしてね♪

それで僕は、
「きょうこちゃん、あなたは覚悟がないから、
切ってしまいなよ」と伝えました。

最初、
きょうこちゃんは臆病になっていたので、
「切ってしまおう」と思っていたようでした。

だから僕は、
「それでいいんじゃない?
別に気にすることはないよ。
あなたらしいのだから、いいと思うよ」と伝えたのです。

でも、
そこからきょうこちゃんはいろいろと考えたようで、
「やっぱりそんなことではいけない」と思ったようでした。

それは何かというと、
自分ががんを増殖させる性質を持っているのに、
そのままにして
ただ切ってしまったら、
それでは意味がない、と。

それで、
本人の決断としては、
「わたしは切らないでいきます。
なぜ自分ががんをいただいたのかと自分を振り返ってみたら、
それはがんになるだろう、と思う」と言うのです。

僕は前から、
「あなたはへそ曲がりだね~」と伝えていたし、
がんになってからは、
「あなたはがんになってふさわしいね~
だから、自分を変えなよ」と伝えてきたのですが、
最近まできょうこちゃんはなかなか自分を変えませんでした。

もし、
自分のこころががんを作る性質だとしたら、
人生にとって最大のチャンスなのですよ!

お医者さんに切ってもらったら、
がんを作る性質を持って
死んでいくのです。

僕が笑ってしまったのは、
きょうこちゃんはがんになった途端に、
「わたしは死ぬかもしれないと思った」と言うのです!

それって、
すごくおかしな話じゃないですか??

「あなたはがんにならなければ、
死なないと思っていたの??
そこがすごいね!!!」と伝えたのですが、
人は必ず死ぬのです。

僕は、
いつでも死を意識しながら、
今を真剣に生きていますし、
死ぬために日々を生きているのです。

ところがきょうこちゃんは、
「がんになって初めて、死ぬかもしれないと思った」と言うのです!

本当のことを言うと、
ここが少しまぬけなところなんですよね。

でも、
物事にはこういった捉え方があるのです。

あなたのアトピーは、
あなたのこれまでの経緯や今のあなたの表情からすると、
心因性のものです。

ストレス性と言ってもいいですね。

ストレスは、
会社に行って会社の業務がどうだとか、
ブラック企業だからどうだとか、
とかく人は環境のことをいろいろ言いますが、
そういった環境に縁があったのも、
そこに居続けるのも、
そこでそういう人間関係を作り出すのも、
すべて自分が原因になっているのです。

そこで、
あなたが本当に、
自分がアトピー体質を持っていることを納得したときに、
アトピー体質は消えていくのです。

でも、
今のあなたは「どうしたらいいのかわからない」と言っていますね。

わからないということは、
自分の中にまだその性質があって、
アトピーのヒビキを作り続けているということなのです。

だから、
その性質がある限り、
外で仕事をガンガンやっていてもそれがストレスになりますし、
仕事をしないで家でブラブラしてもストレスになりますし、
良いお嫁さんがいて一生懸命世話をしてくれても、
それがストレスになるのです。

口では「ありがたい」とは言うものの、
「俺ってこんなことでいいのだろうか?」ということになるわけです。

それはすべて、
自らの性質が作っているのです。

これは、
生まれもっての性質であり、
いつもサングラスをかけているようなものですから、
サングラスをはずさないことには、
そのサングラスの色から離れて
ものを観ることはできないのです。
 

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
 

そこで、
みのるんはすかさず、
「それをするためには、
どうしたらいいのでしょうか?
こころ磨きですか??」
 

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
 

こころ磨きというのは、
木の花用語ですが、
それしかないですね。

それはなにも、
木の花のためにあるのではなく、
生きているということは、
いわば、自らを知る旅をしているのです。

そうすると、
生きていると何が起きるのかというと、
生きるということは、
自分自身の性質がこの世界に放たれるのです。

いろいろな出会いによって、
あなたの人間性が
外へ放たれるのです。

そうすると、
この世界は鏡ですから、
それが返ってくるわけです。

そして、
それに対してあなたが反応し、
また返ってくるのです。

そのやりとりによって、
この世界はできています。

そうすると、
返ってくるということは、
アトピーであっても、
あなたの中にその性質があるのです。

出会う人も、
あなたが出会うべきして出会っているのです。

それをよく理解するということは、
自らを知るということです。

自分が先に何を発しているかによって、
何が返ってくるのかが決まるのですから。

こころ磨きとは、
そういったことを言うのです。

たとえば今、
あなたはアトピーというテーマをいただいているのだとしたら、
「アトピーはまさしく自分から発していた!」と気付き、
発していたアトピー的性質は、
どういうところで、
どんなふうに微妙に巧妙に発していたのかを知ることが大切です。

そして、
同じ場面が毎日いろいろなところで来るのです。

そのときに、
それをやらないようにしていくのです。

それが、
こころ磨きです。

そうすれば、
おのずと種は蒔かないので、
ある程度の期間のうちに
アトピー的体質は消えていきます。

アトピーであっても、
これはある意味精神病なのです。

それがうつになるのか、
もっと複雑な統合失調症のようなものになるのか、
精神的な病はいろいろありますが、
それがアトピーとして体に出ただけのことで、
これは同じことなのです。

最後にひとつお伝えしたいことがあります。

あなたは、
自分に対して興味が強いので、
狭い世界を生きています。

そういう意味では、
今回アトピーをいただくことによって、
自分の世界を広げるチャンスでもあるのです!

考えてみたら、
良いチャンスですよね。

今のあなたはお尻に火がついて、
このままほっておけない状態になっているのですから、
これはある意味追い風なのですよ♪
 

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
 

いさどんが発するチャンスのヒビキを感受し、
自然療法プログラムをスタートさせたみのるん。

これから、
みのるんの中に
みのるん本来のヒビキが目覚めていくことを願って。
 
 
 


みのるんのケア滞在記

今月21日に、木の花の自然療法プログラム(通称ケア)を卒業したみのるん。25日の木の花夏祭りに参加するため、奥さんと一緒に再び木の花を訪れ、その夜の大人ミーティングでファミリー宛に書いた手紙を読んでくれました。以下に、その手紙をご紹介します!

■     ■     ■

6月2日より、7月21日まで、アトピー性皮膚炎の治療のため、50日間木の花ファミリーに滞在させていただきました。
私は今、県立図書館でこの滞在記を書いています。家にクーラーがないので避難しています(汗)。本当に皆さんのおかげで、病気になる前にも通っていたこの図書館に戻ってくることもできるようになりました。

朝どりグリーンピースを使った恵みいただきますの料理
朝どりグリーンピースを使った恵みいただきますの料理

私が、初めて木の花を訪れた日は、「恵みいただきます」の日でした。グリーンピースをその日の早朝に採ってきたという皆さんに出会い、その味と雰囲気に驚かされ、想像以上のもてなしと空間に圧倒されたのを思い出します。

木の花に来る前は、ブログや、宇宙おじさんの動画など、インターネットを通して木の花のことを色々知るにつれ、不思議と惹かれていく自分がいました。あわちゃん、よしてる君、マコトさんを見た時は、ネットでみた人!とちょっと興奮していました。いさどんと初めてお会いした時は、伝説の偉人に会うような気持ちでした。

面談では、「あなたの病気の原因は心因性のもの」と伝えられ、物理的な要因が原因と思っていた私はちょっと戸惑いました、しかし、なんとか身体を治したいと思い、木の花でのケア滞在をお願いしました。

妻の介護なくしては生活がままならなかった最初。木の花にきても、自分の最低限のことをするのにとても気力を要しました。体温調整や食欲調整、睡眠リズムなど、人としては当たりまえの調整機構が破綻していました。服をタンスから出すことも、しまうことも、動く度に、身体中に痛みと痒みが伴い、それに耐えるのに、毎日が大変でした。
しかし、そうやって動くことで自分の回復度合いが把握できると共に、生活のリズムを取り戻していったように思います。ストレスの調整もできず、暴食している自分もいましたが、メンバーの皆さんの計らいもあってコントロール出来るようになりました。

毎日出させてもらった大人会議。こんなに真剣に話し合い、自分を出し合って議論する世界があるのだと驚かされました。真剣さの底には、優しさも感じられ、それが木の花全体を癒しの空間にしているように感じました。その空間が私を癒してくれたようにも思います。
そんな会議に、私の日記をシェアさせてもらう機会が与えられ、恐々としながら発表させていただきました。「正直、素直、信じる」をテーマに書き始めた日記。しかし、いつしか聞く人を意識した内容になっていたり、何が正直なのかがわからなくなっていたり、人の言っている言葉と自分の言葉が混同していたりなど、自分一人では気づけなかった、自分だと思っていた「自分なり」の世界を見つけることができました。
今でも卒業の合格点をもらえたようには思いません。毎日が真剣勝負で、これからも心を磨く必要性を感じることができました。

ケア滞在を始めたばかりのみのるん
ケア滞在を始めたばかりの頃

有難いことに私の身体は日を追うごとにどんどん回復していきました。それは、皆さんから何気なく、いつも声をかけて下さったことや、真剣に心を話し合える瞬間瞬間のエネルギー、また、面談で自分の姿を教えて頂いたお蔭だと思います。
木の花の皆さんが朝から晩まで働いて作った、汗と努力の本物の作物や料理のお蔭です。木の花ファミリーの皆さんがケア滞在という形で作ってくださった受け皿のお蔭で、私は回復することが出来ました。

卒業式のみのるん ー 奥さんも泣いています
卒業式のみのるん ー 奥さんも泣いています

私は、傲慢ですが、なんとか自分の思いで自分の力で生きようとしました。でも壊れていく自分の身体と精神に、何もできませんでした。徹底的に打ちのめされました。仕事も、夢も、努力したと思っていたことも、全部手放さざるを得ませんでした。
木の花ファミリーの皆さんが教えて下さったことは、言葉で表せないこともあります。

自分達は生かされている
助け合って生きる精神的、物理的豊かさ
競争を手放した生き方
誰かの為、大切な思いのために働くということ
客観的に自分を見て、自らと向き合う生き方
他者の喜びを、自らの喜びとする生き方

朝早くから夜遅くまで、疲れた様子も見せず、田んぼ隊で働くサポーターのまことさん
嫌な顔一つせず、夜遅くまで相談に乗っていただきありがとうございました。

炎天下の中、もくもくと働いて食べ物を作って下さった収穫隊、田んぼ隊、畑隊の皆さん
朝早くから夜遅くまで心を込めて日々の食事を作って下さったキッチンの皆さん
木の花の住まいと身辺のお世話をして下さったひまわりの皆さん
木の花の運営、事務、管理、情報提供をして下さった事務の皆さん
音の波動で心も体も癒して下さった、木の花楽団の皆さん
いつも明るい雰囲気を作ってくれた木の花の子供達
心のケア、木の花の柱と精神を作って下さった、いさどん、陽子さん

皆さんが本当にいつも温かく接して下さり、ありがたかったです。
皆さんとの出会い、この恵みに、心から感謝いたします。
ありがとうございました。
身体にこたえる猛暑が続きますが、どうぞ夏バテなどされませんように。
また皆さんにお会いできる日を楽しみにしています。

みのるん

 

6月の恵みいただきます終了後、みんなで記念撮影
6月の恵みいただきます終了後、ファミリーみんなといっしょに