今年、台湾国営の客家テレビにて「Seeds from the Heart」というテレビ番組が放映されました。
これはオーディションで選考された台湾の若者が海外で様々な技術を学ぶというもので、昨年木の花ファミリーに、園芸高校に通う18歳のあーちゃんが4名の撮影スタッフとともにやって来たのでした。(その時の様子を、木の花ファミリー通信第74号にて紹介しています。)
そしてこの夏、そのテレビ番組を見たという国立台湾大学の学生さんたちが木の花ファミリーを訪れました。親からも、ぜひ一度木の花ファミリーに行ってくるように、と強く勧められたとのことで、はて台湾ではいったいどのように放映されたのだろう、と思い、あーちゃんに連絡を取ってみたところ、あーちゃんがプロデューサーに頼んでくれて、番組全編を見られるURLを教えいただいたのでした。
これがおもしろい!!!
撮影のためにあーちゃんが木の花に滞在していた時には知らなかった台湾の社会的背景やあーちゃんの夢が語られ、それが木の花に来てどのように変化していくのかが描かれており、メンバー一同今さらながらに「そうだったのか〜〜〜!!」と目からウロコ。改めて、あーちゃんと出会えてよかったな、と、噛み締めたのでした。
実は番組には描かれていませんが、滞在中に変化したのはあーちゃんだけではありませんでした。プロデューサーを始めとする4人の撮影スタッフも、当初は肉も魚も食べずタバコも吸わない木の花の生活を「絶対厳しいよね」と敬遠し、人と一緒にお風呂に入るという台湾にはない習慣に戸惑っていましたが、日に日に皆と打ち解けてゆき、最後にはお風呂の時間が楽しみになって風呂場で記念撮影までしていたほど(笑)。
そして当初は日本のお茶農家を訪ねることがメインだったはずの番組が、いざ出来上がってみると44分間のうち半分以上が木の花になっていました。
さあそれでは、その番組「農業心種子 〜 Seeds from the Heart」をどうぞご覧ください!!
*番組には中国語と英語の字幕が付いています。下記に、日本語の要約文を掲載します。【 】内に時間を表示していますのでご参照ください。
■ ■ ■
場面は、あーちゃんが日本に来る40日前の台湾のお茶農園から始まります。手作業での収穫。技術の必要性を語る地元の人々。
あーちゃんは18歳。園芸高校の3年生です。卒業後は、大学に進学せず田舎の祖父母のもとで農業をすることを選びました。「彼らのもとで農業を学びたい。その方が実践的な道だと思ったから」とあーちゃん。
祖父母の地元で、あーちゃんはさつま芋の収穫をします。
台湾の農業には、高齢化という現実があります。あーちゃんのおばあさんは66歳。都会では60歳で定年を迎えるのに、ここではおばあさんはまだまだ若い方。70、80歳でも働いている人たちがいます。「人を雇おうにも雇える人がいない。僕がいなければ祖父母は2人きりになる。」
おばあさんは、自分たちを手伝いにあーちゃんが帰ってくることを申し訳なく思っています。
「孫は、自分が望んでそうしているのだから申し訳なく思う必要はないと言うの。だから彼の好きなようにさせています。」けれどもおばあさんは本当は、あーちゃんが勉強を続けることを望んでいます。
しかし、あーちゃんは言います。「勉強は無意味だ。無意味な大学を出ても月収7万にしかならない。車も買えないのに、ましてや家が買える?それでどうやって子どもを育てる?」
地元の男性は言います。「今の若者は農業をしたがらないよ。お金にもならないし。若者はこんな暑いところよりも、エアコンの効いたところで働きたいんだよ。」
別の男性は言います。「あと5年もしたら、今働いているここの女性たちは、年をとって働けなくなるだろう。そして機械が取って代わるようになる。彼(あーちゃん)も最新の機械を買うべきだね。彼はいい子だよ。でもどんなに一生懸命働こうと、この田舎に縛り付けられることになるだろうね。」
あーちゃんは言います。
「自分たちの農業の文化を変えたいんだ。日本やヨーロッパでは、百姓は敬意を払われている。農業が価値ある仕事になっている。だから僕は、大学に行かずに若い百姓になりたい。僕の話を、最初はみんな冗談だと思ってた。そして馬鹿げていると言ったよ。」
「僕の目標は、4年間で330万円貯めること。大学に行くはずだった時間を、お金を稼ぐために使うんだ。みんなは大学に行くために、4年間で330万を使う。でも僕は、4年間で330万円を稼ぐ。つまり、4年後にみんなより660万円多く持ってスタートを切るんだ。
僕の夢は、スポーツカーを買うこと。男にはみんなスポーツカーが必要だよ。大きさや速さはどうでもいい。ただスポーツカーでありさえすればいいんだ。」
そして番組のオーディションに受かり、日本へ農業を学びに行くことになりました。
「航空券を手にした時、わお、本当に外国に行くんだ、と思った。すごく楽しみだよ。日本に行ったら、百姓がどんなふうに生計を立てているかを学びたい。農業をやる人が減っていることに対しての解決策があるのかも知りたい。」
日本に到着し、街を歩くあーちゃん。
「日本の街並みは、想像していた通り。雑誌や漫画で見ていたからね。」
日本では、伊豆の自然農法大学校に通う台湾人のカエイちゃんが、通訳として同行することになりました。
(実は木の花ファミリーを番組プロデューサーに紹介したのも、カエイちゃんでした。農業で一番大切なのは心、というカエイちゃんに、プロデューサーが「では日本で心を大切にしているところを教えてほしい」と頼み、木の花が紹介されたのでした。)
【7:00】
あーちゃんはまず、御前崎のお茶農園へ向かいます。
社長と挨拶を交わした後、さっそく最新式のお茶刈り機に試乗をさせてもらうあーちゃん。「台湾ではこんな機械見たことがない。素晴らしい!!」と大興奮。「おじいちゃんがなんと言おうと、日本人は素晴らしい。こんな機械があったら、この茶畑全部を一人でやれる。将来お茶を作ることになったら、絶対この機械を買うよ!」
その後、製茶工場を見学します。カエイちゃんに日本語を教えてもらい、従業員の女の子に「あなたはどのくらいここで働いていますか」と聞くあーちゃん。彼女が2週間と言うのを聞いててっきり2週間働いているのかと思ったら、カエイちゃんから「この作業は2週間続くって言ってるのよ」と聞いて「通じないな〜」と苦笑い。
工場内を見学しながら、最新式の設備に感心しきりのあーちゃん。「全てが自動的に動いてる。素晴らしい。不思議の国のアリスになった気分だよ。(スタッフに向かって)僕のこと笑ってるけど、初めて来た時には同じように思ったでしょ?」
工場全体に3人しか人がおらず、明後日は1人で稼働すると聞いて「台湾ではあり得ない」。異物が混入したらすぐに機械を止めるX線装置を見ながら「消費者に選ばれたかったら品質だけじゃなくて梱包も重要だ」と感心しっぱなしです。
お茶農園の社長は、一日50種類のお茶を試飲します。それを見ていて、奇妙な感覚をあーちゃんは覚えます。
「だって僕は台湾でたくさんさつま芋を植えているのに、一度もそれを食べたことがない。食べたことがないのに、どうやってそれを消費者に勧められる?それがいくらで売れるか、ということにしか関心がなかったんだ。だけど社長は、初めて会った時から最後まで、一度もそのお茶がいくらで売れるか、という話はしなかった。」
社長とカエイちゃんと飲み屋に出かけたあーちゃんは、社長のiphoneに写っているスポーツカーの写真を見せてもらいます。
「僕は男はみんなスポーツカーを持つべきだと思ってる。社長はすでに3つも持っていた。憧れるよ。僕の人生の目的をすでに達成してるんだもの」と言うあーちゃんに、社長が、私も若い時には買えなかったけれど、目標を持ってがんばった、あなたも頑張れば大丈夫、とエールを送ります。
【14:00】
そして舞台は、カエイちゃんの通う自然農法大学校へ移ります。
農薬や化学肥料を使わない百姓を育て、人々を健康にするという学校の理念を語るカエイちゃん。
あーちゃん「僕の学校では農薬は使わない。でも雑草は取り除く必要がある。雑草が全て取り除かれると、点数が上がる。取れば取るほど点が上がるんだ。」
カエイちゃん「変なの!」
あーちゃん「変だよ。生徒はテストのために生きてる。でもテストで良い点を取ったからって、ものごとを理解してるわけじゃない。たとえ満点でもね。」
カエイちゃん「テストをパスすることと理解することは違うね。」
あーちゃん「でも台湾では、テストで良い点を取ることが大事なんだ。それが全てになってる。」
カエイちゃんが語ります。
「私は台湾で文学を学んでいました。農業とは何の関係もありません。成績は良かったです。だけど、大学が人生の最終到達点のように思えてしまって、そこから先に何をしたらいいのかがわからなくなったんです。それで家に帰って、農業か何かをやろうと思いました。そして日本で、自然農法を学ぼうと思ったんです。そこに、人と自然が持続可能に生きられる何かがあると思ったから。」
自然農法大学校の若者たちと一緒に作業をしたあーちゃんが言います。
「台湾では他の学生を見ることがない。もし一緒に骨折って働ける仲間がいたら・・・さつま芋を一緒に運んだりしたら、きっと疲れない。僕は家で働くとすごく疲れる。おしゃべりしたり、心を分かち合ったりする同年代の仲間もいないから。」
カエイちゃん「生徒たちは週末には外出するの。」
あーちゃん「遊びに行くの?」
カエイちゃん「そう。みんなでカラオケに行ったりとかね。」
カエイちゃんは言います。
「 私は大学を2回落第しています。その頃は、とても混乱していました。鬱になっていたのではないかと思います。たくさん食べては吐くということをしていました。それ以外の鬱の症状も出ていました。その状態が1年ほど続きました。家から出ることもできず、他の人と向き合うこともできませんでした。」
「これから訪ねるのは木の花ファミリーです。私は以前、木の花についての記事を書きました。今も、時間がある時にはそこに行きます。大体月に1、2回かな。日本では、私の心のふるさとのような場所です。」
【19:45】
そして自然農法大学校から木の花ファミリーへ!
木の花ファミリーに到着し、なかのんがスーツケースの車輪を拭いています。
あーちゃん「今の感覚をまだどう表現したらいいのかわからないよ。」
到着して、初めての昼食。
あーちゃん「なるほど、みんなの準備ができるまで待つんだね。」
あすか(当時2歳)が「おいのりします!」と声を上げます。
【21:55】
田んぼ隊メンバーと一緒に、お茶畑での除草作業を始めます。御前崎で最新式の機械とは対照的な手作業での地道な作業に、あーちゃんは口数も少なです。
カエイちゃん「畑でカマキリを見つけると、私たちは喜びます。だってカマキリはたくさんの害虫を食べてくれる天敵だから。自然農法にはたくさんの流派があるけれど、一般的に、生態系を持続可能に保つことを旨としています。そして自然に作物との対話をします。例えば、虫を見付けたらつかまえるでしょう。でもそれがカマキリのような天敵だったら、感謝するんです。」
撮影スタッフ「台湾の君のさつま芋畑に、カマキリはいる?」
あーちゃん「いいや、いないよ。木の花の人は虫を見つけると喜ぶね。でも僕が畑でなめくじやバッタを見付けたら、自分の作物が食べられちゃうって思うだろうね。だけど木の花の人たちは、心配する代わりに写真を撮るんだよ。」
肥料まきをしながら。
あーちゃん「慣行農法無しには、世界の人口を食べさせることはできない。」
【23:12】
日本に来る10日前の台湾のあーちゃんの地元。男性が裸足で農薬をまいています。
あーちゃん「僕の地元の年寄りたちは長靴を履かない。裸足で畑に入るし、防護装置も着けずに農薬を撒いてる。
僕は、人々を惹きつける自然農法とはいったい何なのかを知りたい。彼らが人生をそれに捧げるのはなぜなのか。だって、僕にとっては自然農法は全然魅力的じゃないから。それが正直な想いだよ。」
【23:48】
茶畑での作業の後、地主のおばあちゃんの家で休憩しながら、あーちゃんがメンバーたちに質問をします。
あーちゃん「皆さんは全員、農業をやっている。世界にたくさんの仕事があるのに、どうして農業を選んだの?ただ興味があるから?それとも経験者だから?」
*まこっちゃんが、質問に日本語で答えます。
引きこもりだった自分がなぜ農業を選んだのかを、まこっちゃんの言葉で、どうぞお聞きください。
【26:08】
本宅でゆりか(5歳)に絡まれるあーちゃん。
撮影スタッフ「一緒に遊べば?」
あーちゃん「子どもは嫌いなんだよ。」
撮影スタッフ「じゃあ、やめてと言ったら?(ゆりかに向かって)こっちにおいで!頭をなでてやったら?」
あーちゃん「あぁ、もう耐えられない。」
【26:28】
木の花庵の廊下に座り込むあーちゃん。
あーちゃん「ここは美しいけど、僕にはいいところだとは思えない。この暮らしに馴染めない。僕は普段、寝たい時に寝て、疲れてなければ寝ない。シャワーを浴びるのは寝る前だけ。でもここでは毎日決まって午後6時に浴びなくちゃいけない。
ゲストが一人でシャワーできる所があればいいのに、と思ったよ。そうすればみんなと一緒に浴びなくて済むから。
僕は普段は気ままに生きてるんだ。だけどここでは、全てが決められていて、時間通りに動かなくちゃいけない。本当に馴染めないよ。行動が制限されて、最初は軟禁されたような気分だった。」
【28:00】
カトケンと一緒に、肥料作りを体験。
カエイちゃん「これは昨日お茶畑でまいたものよ。ボカシと言って、未完熟な分解のコンポストなの。」
あーちゃん「(荷物を運ぼうとして)まず、ウォームアップさせて。でないと持ち上げられないよ。(軽く準備体操をした後、コンテナを持ち上げてみて)あー、とても軽いんだね。」
「(くしゃみをして)すごく涙が出る作業だね。」
「自分で肥料を作るなんて、やったことがない。僕の地元では肥料は買うのが普通だよ。ほとんど全てが化学肥料だね。」
カエイちゃん「これは植物を搾った残りかすよ。すごくいいにおい。」
あーちゃん「 本当?嗅がせて。」
カエイちゃん「 うーん、いいにおい。」
あーちゃん 「地元に帰ったら何をしようかと考えてる。こういった機械(攪拌機)もないから、シャベルを使って土を返さなくちゃ。時間がかかるね。ちょっと考えてみるよ。やってみたいんだ。」
カエイちゃん「カトケンは新潟県の出身。新潟はコシヒカリの産地なの。小学生の時に、人生の意味を考え始めたと言っているわ。」
あーちゃん「小学生の時に?その年のわりに大人だったね。」
カエイちゃん「そう、どんなライフスタイルが最大の喜びをもたらすかを考えたのよ。みんなが真の幸福を感じられるライフスタイルを。」
*カトケンが、なぜ自分はこの生き方を選んだのかを語ります。
〈実はこの数日後にカトケンは木の花を離れたのでした。映像の中のカトケンを見て、半年ぶりに帰ってきた現在のカトケンとあまりにも表情が違ってビックリ!〉
〈カトケンの変化については、木の花ファミリー通信今月号のメンバー紹介をどうぞ!〉
あーちゃん「僕らはとても似ていると思った。僕の母も祖母も、僕が大学に行かずに地元に戻ることに最初は反対したよ。だけどカトケンはこう言った。彼がこの暮らしで何かを掴んで、良い人生を送ることができるなら、両親もきっと理解するだろう、って。それを聞いて、勇気をもらった。だって彼はすでにそれを実現しているから。彼の両親はもう、反対しない。だから僕も地元に帰って、何があっても自分の信じることをやり続けたら、きっと母も祖母も、僕を支えてくれるようになるんじゃないかと思うんだ。」
【31:45】
ウェルカムコンサートにて『Welcome to 木の花ファミリー』を歌う木の花楽団。会場のメンバーたちも一緒に歌ったり、踊ったりして、そのようすをあーちゃんはカメラに収めます。
あーちゃん「ここの人たちが求めているのは、お金じゃない。10年、20年前はそうだったかもしれない。でも、今は違う。
自然農法とは、健康や、環境のことだ。それは、お金じゃできないことなんだよ。」
【33:00】
お風呂場でまこっちゃんの背中を流しながら。
あーちゃん「気持ちいい?」
まこっちゃん「Very Good!」
【33:40】
サツマイモ畑でひろみちゃんと一緒に収穫。
あーちゃん「ここの土は本当に親和力がある。とても良い土だ。見て、土に団粒性がある。僕の地元の土は、こうならない。ここの土は握れば固まる。」
ひろみ「(さつま芋を見せながら)Too big!」
撮影スタッフ「どういう意味?」
あーちゃん「Very big. すごく大きいってことだよ。彼女が何を言おうとしているのかを感じなくちゃ。そのためにはいくつかの単語さえわかればいい。英語と同じだよ。ほとんどの単語は助詞だから意味がない。自分が知っている日本語を使えばいいんだ。言語は語彙力が全てで、文法はそんなに重要じゃない。互いに理解し合えれば、それでいい。」
ひろみ「He likes talking.(あーちゃんは話をするのが好きね。) Do you like talking?(話すのが好き?)」
カエイちゃん「話をするのが好きかどうか、ひろみちゃんが聞いているよ。」
あーちゃん「うん、すごく良くしゃべるよ。すごいおしゃべりだよ。」
(ひろみ:笑う)
あーちゃん「最初の数日は、あまり話さなかった。でも、今日さつま芋の収穫をして地元を思い出したんだ。それでいろいろ想いが湧いてきてる。」
そのままあーちゃんは、サツマイモ畑に寝転びました。
【35:50】
釜戸小屋で、えいこばあちゃんと一緒におこわを作ります。
あーちゃん「えいこばあちゃんはとてもよく気が付く人で、こちらがお腹をすかせていたらすぐにわかるんだ。」
「(味見しながら)しょっぱくも油っぽくもないよ。すごくいい匂い。野菜の香りだね。(日本語で)超おいしい!」
〈ここで「えいこばあちゃん70歳」という字幕が出ますが、実際は74歳です♪〉
あーちゃん 「えいこばあちゃんはあまり英語を話さない。だから、僕たちが会話をするのは難しい。彼女は素晴らしいよ。まるで僕のおばあちゃんみたい。彼女は調理器具もそのまま素手で扱えるんだ。他の人がフキンはどこかな、と探している間に、もう料理をテーブルに置いてるんだよ。」
【37:00】
林の中を歩きながら。
あーちゃん「僕が育った町には友達がいるけど、祖父母の町にはほとんど友達はいない。でも、僕が本当に我が家のように感じる唯一の場所は、祖父母の町。時々、僕は祖父母のことを気の毒に感じるんだ。二人とも田舎に孤独でいるから。彼らの子どもたちは、もはや田舎に住んでいない。」
〈台湾の祖父母と食事をしている映像が映し出されます〉
「子どもの頃から、祖母は僕を甘やかしてきた。彼女は僕の好きな食べ物を知っていて、僕が戻ったら、お気に入りの料理を全て作るだろう。もし僕がおいしくないと言ったら、その料理はもう二度と僕の前には出てこない。祖母は自分のためには作るかもしれないけど、僕には二度と出さないんだ。」
撮影スタッフ「おばあさんについて感じることを、人に話すことはある?」
あーちゃん「ほとんどない。両親でさえ知らないよ。もしも祖母のことを話したら、両親は僕のことを偉そうだと思うだろうね。それは普段の僕と違うから。
もし、誰かが急に自分の感情を全て話し出したとしたら・・・そう、人はたぶん、それがその人の本心だとは思わないんじゃないかな。だから、僕は人に話さないことを選ぶんだ。」
【38:20】
滞在最終日の夜。ファミリーの大人全員が集まる大人ミーティングで、あーちゃんが台湾から持ってきたお茶を淹れてくれました。
あーちゃん「こんばんは。この日本への旅行のために、台湾でお茶について学んできました。そして、これは自分で作ったお茶です。
〈日本へ行く7日前の台湾のお茶工場の映像〉
あーちゃん「朝10時から始めて、翌朝4時近くまで終わりませんでした。これが客家(ハッカ)精神です。これは、主に客家地域で生産されているお茶です。日本人は緑茶を飲むので、ここの皆さんのためにお茶を持ってきました。台湾人がどのようなお茶を飲むのかが、わかると思います。」
写真を見ながら木の花メンバーたちがお茶について質問したり、試飲をします。
その後、あーちゃんがみんなに挨拶をします。
あーちゃん「僕は木の花で多くのことを学びました。最初は、自然農法についてだけ学ぶのだと思っていました。こんなにも多くのことを得られるとは思ってなかった。できたら、僕の祖母と両親を本当にここに連れてきたいです。日本にこんな生き方をしている人達がいるってことを、知ってもらえるように。」
*えいこばあちゃんが、あーちゃんに挨拶をします。
えいこばあちゃんの言葉をじっと聞いていたあーちゃんが言いました。
「えいこばあちゃんにハグしてもいいですか?僕のおばあさんを思い出すんです。」
木の花楽団の曲『この世界をつくっているのは』が流れます。
カエイちゃん
「種は発芽する必要があります。農業では、種は独りでに発芽するわけではありません。水を必要とします。土を必要とします。酸素を必要とします。それから適切な天候が必要です。だからあなたを、ここに連れてきたのです。私がやっているのは、ただ種を蒔くこと。これは素晴らしい運命だと思います。」
あーちゃん
「僕は今、とても感動しています。日本語の歌詞はわからないけれど、美しい音楽と映像が、歌の魂と僕をつなぎ合わせてくれました。
僕は・・・この音楽を聴きながら、自分の心の中を感じました。そして、自分がこの人生で本当に求めているものは一体何なのか、ということと、向き合ったんです。」
*おまけ
エンディング曲となった『この世界をつくっているのは』は、一人ひとりが心の中に想いの「種」を持っており、どのような花をこの世界に咲かせるのか、ということを歌っています。そしてこの番組のタイトルは、「Seeds from the Heart」―――― そう、「心の種」なのでした。