人類史上初の「リョウ」の集いにようこそ! ~PART6:リョウタロウくんの卒業コンサート♪~

リョウくんリョウタくんの卒業コンサートが行われてから約4ヶ月を経て ──── 去る2月11日にリョウタロウくんの卒業コンサートが行われました。この日はなんと、14年間木の花ファミリーで自然療法プログラムを提供して以来初めての、ケア滞在者3人の卒業コンサートを同日に迎えることができたのでした。

以下、自然療法プログラムコーディネーターのようこがまとめたリョウタロウくんのケア物語と、卒業コンサートでのかっちゃん(養鶏担当でリョウタロウくんと作業をすることが多かったメンバー)・いさどんからのメッセージをご紹介します。

「リョウタロウくんのケア物語」

20歳のリョウタロウくんが初めて木の花ファミリーを訪れたのは、2017年7月22日のことでした。中学生の頃から生き辛さを感じ、高校生のときには統合失調症と診断されたリョウタロウくんは、「僕には不適切な感情が湧いたり、思考伝播があるので、そういった自分の今の症状をすべてなくしたい」ということでいさどんの面談を受けました。面談の際、いさどんからは、次のように伝えられました。

「今の症状をなくすためには、現実の環境と自分の考えを統合する作業を繰り返していくことが必要です。そこで、自分から見たものが正しいとして主張すると、まったく効果は現れません。一番大切なことは、自己主張せず、こちらを信頼し、こちらの客観的なアドバイスを取り入れていくことです。そうすれば、新しい考え方が生まれてきて、その結果統合失調症の症状を改善することは可能です。

あなたについて僕が感じるのは、あなたは20歳のわりにはとてもふけているということです。それは妙な理屈っぽさが先行しているからです。20歳の今のあなたが思考回路不全症だとして、『今、この混乱した世の中で思考回路不全症だということは、人間の世界では馴染めないけれど、もっと大事なものに自分のピントを合わせることはできるぞ!』と思えるならば、あなたは次の時代を創る人にもなれるのです!この自然療法プログラムの取り組みは、治療が目的ではないのです。これは、人間を目覚めさせるための活動なのですから、壮大なプロジェクトなのですよ♪」

面談が始まった時には、上手く意思疎通が取れなかったリョウタロウくんでしたが、面談が進むにつれて、リョウタロウくんの受け答えは少しずつ秩序だったものになっていき、いさどんはそこに改善の兆しを観たのでした。そして面談の最後にリョウタロウくんは、「ありがとうございます」といさどんに伝え、いさどんはそんなリョウタロウくんに対し、「今の『ありがとうございます』は、あなたが本当に大事なものに気付き始めたから出てきた言葉ですね。あなたに取り組む気があれば力は貸しますよ」と伝え、面談は終了しました。

そして、その1週間後の7月30日、リョウタロウくんはケア滞在をスタートさせたのです。ケアスタート面談時、お父さん曰く、「ケア滞在をすると決めてから状態が良いのです」というリョウタロウくんに、いさどんからは「前回の面談の時よりもさらに会話のやり取りがスムーズになりましたね」と伝えられました。そして、1週間目の課題として、まずはここの生活に慣れることと日記を書くことが与えられました。

そうして迎えた1週間面談。1週間が経ったことを受けて、「1週間過ごしてみてどうでしたか?」といさどんから質問されると、リョウタロウくんは「自分の思考が人に伝わっている感じがあって、その思考がいびつなんです。でもそれは自分の幻聴かもしれないし、そうではないかもしれません」と答えました。それに対しいさどんは次のように伝えました。

「あなたは暇なので、現実味のない話をただ頭で回しているだけなのです。これからやるべきことは、自分にメスを入れることです。それは自分の考えに囚われていてはできません。一番良いことは、働くことです。体を動かして良い汗をかき、健全な生活を送れば、無駄なことに思考は回さなくなるのです。」

そこで、いさどんからの提案としては、ひとまず1週間過ごせたので一歩進んだことを評価し、「次の1週間は不精をなおし、規則正しい毎日を送ることを心がけていきましょう」と伝えられ、面談は終了しました。

そこから、不精をなおす一環として、伸びっぱなしだった髪の毛をカットすることが提案されると、リョウタロウくんは素直に応じ、メンバーにヘアカットしてもらいました。生まれて初めて丸刈りされたリョウタロウくんからは爽やかな空気が漂っていました。さらに、ケア滞在当初は終日スマホでゲームをするか、2ちゃんねるを見ていたリョウタロウくんでしたが、滞在12日目に初めて鶏のお世話をする作業に参加し、「楽しかったので、またぜひやらせてほしいです」と心の面でも少しずつ変化が現れてきました。

そのような中、迎えた2週間面談でいさどんに今の心境を聞かれると、「なんとなく気分が健康になってきました」と答えたリョウタロウくん。そんなリョウタロウくんに、いさどんは次のように伝えました。

「あなたの日記を見ていると、自分の思考に翻弄されているのを感じます。当初の目的として、あなたには今の症状をすべてなくしたいという思いがありますので、それがなくなっていくように取り組む意欲は常に持っているべきだと思います。トータルしてこの2週間を観てみると、今まで書いたことのなかった日記は書けていますし、会話のキャッチボールはできるようになりましたし、成果は出ています。なにより、髪型を丸刈りにしたことで印象が変わったことは大きいですね。そこで、次の1週間のテーマとして、引き続き不精をなおすこと、そして規則正しい生活を送るという意味で、作業に出たり、体を動かしながら自分の変化を観ていきましょう。そして、あなたの幻聴が事実か事実でないかわからなければ判断を保留にし、今後は妄想ではなく事実に基づいて振り返っていきましょう。」

このようにトータルして良い状態でケア滞在を過ごしているリョウタロウくんに対し、いさどんから「夜の大人会議で現在のケアの進捗状況を皆にシェアしてください」と伝えられると、最初は「何を報告していいのかわからない」と抵抗していたリョウタロウくんでしたが、実際、鶏舎での作業のことなどを報告してみると、皆に笑いの渦をもたらし、ひとしきり場を盛り上げたのでした。

そうして養鶏作業にも少しずつ慣れ、作業の待ち合わせ時間も守るように心がけるなど、規則正しい生活が身につきつつあるリョウタロウくん曰く、「昔は遅刻魔で、高校の時は学校始まって以来の遅刻回数だと言われたこともあります」とのこと。また、「作業に出ると不精をなおしやすいです。作業に出るとなると、髭もそるし、歯を磨く気にもなります。作業後に湯船につかるのも気持ちいいし、お風呂に入ることが習慣になってきました」と話していました。さらに服薬についても、リョウタロウくんは今まで飲んでいた薬をケア滞在初日から飲んでいなかったことが判明したのです!「元々薬が効きにくい体質なので、飲んでも飲まなくても変わらないのです」と話すリョウタロウくんに、いさどんが「今回、薬を飲まなくなったきっかけは何ですか?」と質問すると、リョウタロウくんは「面倒くさかったからです」と答え、それに対しいさどんは「それは良い不精ですね♪」と伝えました。

その後、3週間目・4週間目も引き続き、不精をなおし規則正しい生活を送るという課題が与えられましたが、モチベーションが上がらず一日中スマホでゲームをしていたり、なかなかスマホ依存から抜けられないリョウタロウくんがいました。

そのような状況の中、ケア32日目、リョウタロウくんは農作業に行った際、畑でスマホを落として壊してしまったのです!「この機会に2ちゃんねるやゲームをやめて作業に出なさい、ということかな」と話すリョウタロウくんに、5週間面談の際、いさどんからは「これはまさしく天の意志ですね♪ここ1週間はケアの取り組みが少し中だるみしていましたから、気持ちを入れ替え、今後は将来仕事に就くための物理的・精神的体力を身につけていきましょう」と伝えられました。

そうして迎えた6週間面談。リョウタロウくんからは「病気を治すこと、自立して生きていけるようになるのが目的ですが、思考伝播や不適切な思考についてはどう取り組んでいけばいいのかわかりません。わからないので、今、出来ることとして、不精をなくし規則正しい毎日を送ることを心がけました」という話がなされ、それに対し、いさどんは次のように伝えました。

「こちらはせかすつもりはありませんが、目的をいつも心に置いておくことが大切です。主役はあなたなのですから、こちらのサポートとあなたの意欲とがコラボレーションすることによってケアが進んでいくのです。そして、規則正しい生活を繰り返すことが手ごたえとなり、症状の改善に至るのです。加えて言えば、不精をなおし規則正しい生活を送ることは健康の元であり、これはずっと続けていくことです。健康には肉体的健康と精神的健康の2つがあり、肉体的健康が精神的健康を生み出し、精神的健康が肉体的健康を生み出すのです。肉体的健康とは、太陽と月と地球のリズムに沿った生活をすることです。精神的健康とは、考え方に無駄がなく、理に適った思考をすることです。さらに、健康には霊的健康というものもあり、それは醸し出す空気や雰囲気が健全であるということです。

先日、養蜂の手伝いに来ていたおばあちゃんが初めてあなたに出会った後、僕に『あの人は怖いね。ああいう人を預かるのだから大変だね』と話していました。それは一般の人があなたを見てパッと感じる印象です。ですから、何もせずにただそこにいるだけで、あなたはそのような印象を人に与えるということです。これが霊的な健康に関するものです。霊的な健康のためには、日々どのような生活をしているかが重要となるのですよ。」

いさどんの話を受けてリョウタロウくんは、「出来たらその人と仲良くなって、自分のどういうところがそのような印象を与えるのかを知りたいですね」とコメントし、そこでさらにいさどんからは次のように伝えられました。

「あなたは理屈で突き詰める傾向がありますが、霊的なことは日々の生活が整えば自然と改善していくものなのです。霊的なこととは、その人の一番奥にある生命エネルギー、つまり人柄の元となるもののことです。それは、いくら理屈で語っても改善されません。1日1日を規則正しく穏やかな気持ちで暮らすことで改善していくものなのです。」

そして、引き続き規則正しい生活リズムを心がけることに加えて、最近書いていなかった日記を再び書きながら、正直に自分と向き合っていくことが課題として与えられました。

そうして迎えた7週間面談。面談直前にリョウタロウくんが大声をあげて自室の壁を叩き、壁を損傷させたことから、その引き金となった思考伝播についての話をリョウタロウくんが続ける場面がありました。そんなリョウタロウくんに対し、いさどんは「最終的には、自分の納得したことだけを受け取ろうとするのではなく、あなたの持論をそろそろ捨てる時が来ています。それは、人を信頼し、人の話を受け入れていくということです。まずは、怒り出す自分を振り返ることです。どのような理由であれ、大声を出したり壁にあたる必要はなく、冷静に自分を見つめていくことによって、自分が超えられないハードルを解決していくほうが賢いことなのです。大切なことは、自分が病気であると決め付けることをやめることです。なぜならそれは、『自分には今の自分をどうすることもできない』と放棄している状態になるからです。今はケアの取り組みの中で大事な時を迎えているのですから、引き続き自分と向き合っていき、これからは成果を挙げていく段階に入っていきましょう」と伝えました。

ところが、面談の翌日、リョウタロウくんはお父さんに電話をかけ、「いさどんは自分の病気の原因を誤解している。いさどんは理屈をこねくり返す前に人の言うことを受け入れることが大切というが、自分は心にもないことを『はい』ということは出来ない。木の花ファミリーには『心を変えたら問題事は変わる』という信仰がある。それがわからない。努力してもどうにもならないことがある。心を変えても、改善はするが、解決には至らないこともある」と漏らし、急遽面談の場が持たれました。

面談ではいさどんから、以下のことがリョウタロウくんに伝えられました。

「ここで絶対勘違いしてはいけないことは、僕はあなたのことをよくわかっていて、あなたのためにサポートしています。わかっているからこそ、今のあなたの姿勢を改善するための提案をしているのです。そして、結果を出すのはあくまでもあなたであって、こちらにはサポートしかできません。ここは強制する施設ではないのですから、あなたがこちらの提案に真摯に向き合いそれを取り入れた時に、新しい考え方のあなたがいるのです。その提案を受け入れる人には常に良い成果が出ています。しかし、その提案に乗らない人は時間がかかりますし、さらにこちらに対して抵抗したり不信感を持つ人は結果を出すことは不可能なのです。ですから、もしあなたがこちらを信頼できないとしたならば、私たちがあなたを受け入れても仕方がないことになります。」

そこで、このケアの取り組みを続ける意欲があるのか、こちらを信頼する意志はあるのかを問われたリョウタロウくんは、なかなかその質問にはストレートに答えず、「やる気がある部分とやる気の出ない部分がある」「やる気がある部分と少し不信感がある」と言うなどしばらくの間、持論を展開していきましたが、最終的には「やる気はあります」と答えました。それを受けて、「無条件にこちらを信頼することが大切であること」「自分を納得させるためにこの取り組みがあるのではなく、新しい自分に出会うためにあること」が確認され、ケアの取り組みを続行することになったのです。

そうしてある意味、このケアの取り組みのヤマを越えたリョウタロウくんでしたが、「死ね」「キモイ」という声が聞こえてくること、そしてそれは幻聴ではなく現実の声であるという思いがリョウタロウくんの中では相変わらず続いていました。また、いさどん曰く、「結局、ケアの取り組みが成功するかどうかは、最終的には本人の姿勢次第です。今の状況はあなたにとっても良くないはずなのに、こちらからの改善策には応えたくないという心があなたにはあり、簡単に言うとあなたの中に自己矛盾が発生しているのです。それがこの取り組みが長引いている原因です。当初、症状が重い時に改善が観られたのは、その重い症状からあなたの中に真理を求める心が観えてきたからであり、実際に今、滑舌は良くなってきていますし、こうしたやりとりも以前より明快になってきています。ただ、そうしたことが改善してきている一方で、明快に自己主張することによって相手の提案を受け取らない状態が続き、それは自己主張が強くなったということでもあるのです。

現状、この取り組みは滞り気味ですが、そう結論付けるのは時期尚早でもあるので、様子見をしています。ここに来て、あなたの正直な人間性が出てきて、それが社会生活不適応であるならば、その人間性を改める必要があります。僕はあなたを精神障がい者として観ているのではなく、あなたの正気な部分に常に語りかけていますが、あなたにはグレーな部分もあるのです。本当の精神障がい者からすると、そのグレーな部分が日常の思考なのですが、あなたの場合はグレーな部分もグレーな部分として自分で認識できているので微妙なところなのです。こちらは常に人が健常者になるような働きかけをしています。ですから、自分を病気だと思いたい人にはここでの効果は出ないので、あなたのやる気がなければ、滞在はやめてもらいます。愛は深いですが、そこはシビアなところなのです。」

そうして滞在開始から3ヶ月が過ぎた時、いさどんから新たな提案がなされました。いさどんからはリョウタロウくんに対し、「あなたの心の状態を分析すると、まず姿勢が前向きではありません。だから問題事から逃げたくなって、その逃げるときの言い訳のために幻聴が必要な状態なのです。あなたも薄々気付いているでしょうが、あなたは病気ではありません。統合失調症ならこんなコミュニケーションは成立しません。あなたには、無いものをあると思い込む心の癖があるだけです。そこで、3ヶ月を節目として心機一転し、ケア滞在を再スタートさせましょう。まずは、一週間を好きなように過ごしてください。ただし、まったく初めての滞在ではなく、3ヶ月+′(ダッシュ)なのですから、今まで取り組んできたことを踏まえて、自分としっかり向き合ってください」と伝えられたのです。そのような提案がなされたのは、木の花ファミリーで14年前にケアの取り組みが始まって以来、初めてのことでした。

ところが、その1週間後にリョウタロウくんは「自分は幻聴を本当に聞こえるとしか思えない。いさどんの言うことを信じられない状態でここにいることは、いさどんにとっても失礼だし、僕はここにいるべきでないと思うからケアをやめたい」と言い出し、急遽面談の場が持たれました。

いさどんからは、「まわりの人には聞こえていないのに、自分には実際に聞こえているとしか思えないその状況こそが、まさに幻聴の状態です。しかし、ここで大切なことは幻聴が聞こえるかどうかではなく、人の意見を受け入れるのか、それとも自己主張を続けるのかということです。僕は説得するつもりはありませんので、今のあなたの状態ではこちらがケア滞在を拒否します」と伝えられましたが、それを聞いたお父さんからは「その状態では家に受け入れられない」とリョウタロウくんに伝えられました。さらにリョウタロウくんが「それなら病院へ行く」と言うと、お父さんは「そうであれば経済的支援はしない」と伝えられ、リョウタロウくんは「僕はお父さんの支援なしでは生きていけない。ということは、僕の居場所はここしかないということか・・・」と、帰宅を拒否されショックを受けていました。しかし、いさどんから「それならご家族に喜んで受け入れてもらえるような自分になればいいのですよ」と伝えられたリョウタロウくんは、「最初、父に『自立できるまで帰ってくるな』と言われたのはショックでしたが、今は良かったと思っています。なぜなら強制的に腹をくくることができたからです」と話していました。

その後も、「親に『卒業するまで帰ってくるな』と突き放されてから、幻聴も少しずつ消えてきました」と話すリョウタロウくん。社会復帰のためのトレーニングとして毎日を過ごすこと、良い人間関係を心がけ、規則正しい生活を送るようになることがその後の課題として与えられ、そこからさらに3ヶ月が過ぎた今日、リョウタロウくんはとうとうケアを卒業することになったのです。そんなリョウタロウくんに対し、いさどんからは「少し長い付き合いでしたが、ゴールのテープを切りましたね。しかし、ゴールを切ったら、それは次のゴールに向かってスタートを切ったということです。そして、いつかは次の目標達成といきたいものですね」と伝えられました。

ケア滞在の途中で21歳の誕生日を迎えたリョウタロウくんは、大人としての自立への道のスタートを切ったばかりです。これからリョウタロウくんがリョウタロウくんらしく健全で充実した人生を歩まれますよう、今後も木の花ファミリーの皆でサポートさせていただきます。まずは卒業おめでとうございます。

 

「卒業コンサートでのかっちゃんからのメッセージ」

おめでとうございます。リョウタロウくんとは、鶏のお世話で長いこと一緒に仕事をさせてもらいました。そのような中で思ったことは、頼んだことはきっちりやってもらえて、根気があるということです。昨年は玉ねぎの出荷がとても多くて、毎日毎日長時間その作業があったのですが、はじめ、リョウタロウくんはハサミもあまり上手に使えなかったのが、今では上手に使えるようになりましたし、最後までペースが落ちることなく、毎日毎日続けてもらってずいぶん助かりました。

鶏のお世話でも、ちょうど若鶏の産卵のしつけの時だったので、私ひとりでやっていると、座っている若鶏を見つけてしつけをしようとしても、もうそこで産んでしまうことが何度もあるのです。でも、リョウタロウくんにお願いしたら、最初の頃は失敗して若鶏に逃げられることもあったのですが、しばらくするととても上手になって、100%の成功率でしつけをしてもらって、とても助かりました。また、リョウタロウくんがつれていくと、鶏が暴れないのです!今度また、若鶏の産卵のしつけをする時期になったらお願いしますね♪ありがとうございました。卒業おめでとうございます。

 

「卒業コンサートでのいさどんからのメッセージ」

今日は、木の花ファミリーの長い歴史の中で自然療法プログラムを提供してから初めてのトリプル卒業コンサートです。一日に3人の卒業式を迎えました。それが良かったことなのかと言うと、今の日本社会にこういったプログラムを必要とする人たちがたくさんいるということの現われでもあるのですから、それは悲しいことでもあります。ここでは、通常の医療機関ではなかなか治らない人たちが滞在し、健康を取り戻していきます。一般の医療機関で精神病として診断され、顕著な症状が現れている多くの人は、投薬治療などのわかりやすい治療を受けるのですが、そういった人の中には本来薬が必要なのかどうなのか微妙な人たちもたくさんいるのです。しかし、そういった人たちにも医者は薬を処方する一方で、長い人生を不遇にしてしまっている人たちが世の中にはたくさんいます。それは本人の問題でもあるのですが、医療機関もそのような対応しかできない状態にあるのです。

「そういった状況を何とかしたい」という想いから、木の花ファミリーの自然療法プログラムは14年前に始まりました。なぜ医療現場でそのような現状があるのかと言うと、自らの人生を大切にし、自分自身を活かすということを当事者である本人が見出せないことが、一番の原因です。それは社会の成り立ちの問題でもあります。リョウタロウくんのケースにおいても、ここでのケア滞在の受け入れは通常3ヶ月までとなっているのですが、彼は結局半年間ここでケア滞在をし、今日の卒業に至りました。初めて彼に会った時には、「これは難しいケースだ」と思ったのですが、彼と話していくうちに、彼の奥に真理を探究する光のようなものを感じたのです。ほんの瞬間、それがちらっと観えた時、「彼の中にあるものを引き出してあげないといけない」と思い、彼のケア滞在がスタートしたのですが、案の定、3ヶ月での卒業は難しいものでした。そして、彼の取り組みのピークを迎えた時にも、やはり同じように彼の奥にきらっと光るものを感じ、「ここで彼を見捨ててはいけない」と思いました。3ヶ月プラス3ヶ月の6ヶ月間ということで、今までのケア滞在者の中で一番長いケア期間となりましたが、今日、無事に卒業を迎えることができました。

先程、かっちゃんがリョウタロウくんのエピソードを紹介してくれましたが、彼は鶏にはよく合うのです(みんな、笑)!そういった人が今の社会には合わなくても、次の社会には合うとしたら、彼のような人たちが今の社会に合わないからダメということではなく、そういった人々の個性が活かされる場所が必ずあるのです。それを探してあげることが優しい社会ですし、それができるために私たちはこの歩みをしているのです。そういった意味で、今回の卒業コンサートを通し、この活動の意義を強く感じさせてもらいました。ありがとうございます。

皆さん一人ひとりが目覚め、自分の力で健康に生きていっていただくことを提供している木の花ファミリーは、社会的にも重要な役割を果たしていると思いますし、これからもこうした健康な社会を創っていく活動を続けていきます。時代は今、大きく転換しようとしています。それを受けて、一人ひとりの花が今、咲き出したのです。

今日卒業された皆さん、卒業おめでとうございます。人には、一人ひとりオリジナルな個性と物語があります。自分を大切にし幸せにするのは、あなたしかできないことです。これから皆さんがあなたらしく花を咲かせていくことを心から願っています。

 


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