「僕に、心とは何かを教えてください」〜 アトピーになってみて

ただ今木の花にヘルパー滞在中のともくん。16年前にアトピーを発症し、その苦しみを誰にも打ち明けられずにいました。
そんな中、ある日の大人ミーティングで、1ヶ月間の真学校受講生のあわちゃんが自分の想いを正直にみんなにシェアする姿に感銘を受け、「自分もやってみよう」と今の想いを綴り、翌日のミーティングでシェアをしてくれました。
以下に、ともくんのシェア全文と、それに対するいさどんのコメントを紹介します。
 
 
■    ■  ともくんのシェア  ■    ■
 
19歳の冬でした。今から16年前のことです。
突然、僕の肌に異変が起きました。
乾燥して、かゆくなってきたのです。
乾燥、かゆみの範囲は徐々に全身に広がっていきました。

大学卒業後、就職して社会人になりました。
忙しさとストレスで、症状はかなりひどくなりました。
病院へ行きました。ステロイド剤を処方されました。

その瞬間から、負の連鎖の始まりです。
症状の悪化が著しくなりました。
それは現在にまで至っています。

僕は過去、多くの民間療法を試しています。
病院にも3回入院しています。
それら全て大した効果はなく、一時的な対処療法に過ぎませんでした。
莫大な経済的負担を親にかけました。
仕事を失いました。
ステロイドの影響で、皮膚の状態を更に悪化させてしまいました。

引け目を感じていました。
劣等感を抱いて生きてきました。
日々の生活に、幸せを感じることなどありませんでした。
悩み苦しみを、ずっと心に抱え込んでいました。

3年前、長い間使用していたステロイドの塗布をやめました。
社会生活を営む上で、ステロイドは欠かせませんでした。
他者と接する仕事だったため、皮膚を取り繕う必要があったためです。
必要悪と割り切って使用を続けていました。

ステロイドの使用をやめた途端、リバウンドが襲ってきました。
全身から浸出液が溢れてきたのです。
激しいかゆみ、乾燥のため、眠れない日々が続きました。
体中から異臭が漂っていました。
仕事の継続が不可能になりました。
実家に戻らざるを得なくなりました。

本当に辛い時期でした。

それからは、自然治癒力での完治を目指しました。

食生活を変えました。
安静な生活を過ごしました。
そのおかげで、かなり身体は改善しました。

「肌の状態を完治させるには、本格的に食事を変える必要がある。
体内の自然治癒力を高めて完治させるしかない。」

これが病気に関する僕の考えでした。

食事を変え、生活習慣を変えたおかげで
社会復帰できるまで改善させることができました。
ステロイドを使用する必要がなくなりました。
日常生活を送る上で、ほとんど支障がなくなりました、

僕は、全体の70%くらいは治ったと感じています。

しかしながら・・・
残りの30%は、食事や生活習慣だけではどうにもならないのです。

「もしかして、心の状態が関係しているのではないだろうか?」

うすうすは感じていました。
木の花ファミリーでの滞在生活を通して、
この事実に間違いはない、と確信することができました。

こんなことを聞きました。

「病気は心に起因している。心が変われば、病気は消える。」
「本当の自分を知れば、病気はなくなる。」
「心で想っていることが、現実社会に現象として現れている。」
肌の状態を完治させるためにも、心を見つめ、健全な状態にしたいと本気で思っています。
しかし、漠然としすぎているため、どうすればよいのか皆目わかりません。

森羅万象に感謝するように心がけています。
不平不満、愚痴や悪口、泣き言などを口にしないように心がけています。
綺麗な言葉を口にするように心がけています。
何事も前向きに考えるようにしています。
他者と接する際、笑顔を心がけています。

でも、これだけでは足りないみたいなのです。

病気のおかげで気づけたこともあります。
そのおかげで出会えた人も、たくさんいます。
決して良くないことばかりではありませんでした。

「心を見つめ、本当の自分を知りたい。今、与えられている試練を終わらせたい」
現在の僕の正直な思いです。

困難に遭遇したとき、どのような心持ちでいればいいのでしょうか?

健全な心のあり方、持ち方、考え方など
どうすれば獲得できるのでしょうか?

「楽に生きる」とは
どのような生き方なのでしょうか?

僕は今まで、どんな状況も自分一人で解決してきました。
誰にも相談することなく、抱え込んでいました。

心の問題に関しては、僕の独力では解決できそうにありません。

僕に、心とは何かを教えてください。
僕には重すぎる問題です。力を貸してください。
よろしくお願いします。

ありがとうございました。
 
 

■    ■  いさどんのコメント  ■    ■
 
昔、えいこばあに初めて会った頃、えいこばあは「お金ないない病」にかかってました。お金があるのに、ない、ないと言っていて、いつも眉間にシワを寄せて暗い顔をしてました。家に行って玄関を開けると、突き当りの部屋からえいこばあが内職のミシンをする音が聞こえてくるんだけど、その「ダダダダッ」という音が「カネカネカネカネッ」て聞こえたくらいです(笑)。

えいこばあは在日韓国人で、戦後の日本で大変な差別を受けながら育ってきました。それで「私ほど不幸な人はいない」と言ってました。でもね、僕はその話を聞いて思ったんです。
「あなた、五体満足じゃない。子どももきちんと育って、成績も優秀で、いったい何に文句があるの。世の中には戦争に巻き込まれたり、もっと大変な目にあってる人がいっぱいいるんだよ」って。

人は、自分の考えというのを確立するものです。ただ、その考えの方向がどの方向を向いているかで、どんどん良くなる人もいれば、どんどん卑屈になっていく人もいます。エネルギーの向かう方向によって、まったく違ってくるんです。

ともくんという人の魂の形を見てみると、もともとはとても頑固で自分流にやりたがる傾向が強く、人の話に耳を傾けない人です。
それがなぜ、今これだけ謙虚になっているのかというと、そうならざるを得ないだけのものをもらってきたからです。もしもこのアトピーがなくて健康だったら、今ごろ人の話は聞いていないでしょう。

自分を不幸だと思えば、そこには不幸な解釈が生まれます。けれども、これを通して自分は聞く耳を与えられたんだ、と思えば、それは感謝になりませんか。そしてそれを通して人が生きることの意味を知るという、チャンスでもあるのです。

ここにケア滞在(自然療法プログラム)をしにたくさんの人が来ますが、うつ病や引きこもりになりたての人というのは、なかなか良くなりません。なぜなら、まだまだ自分の力で治せるとか、医療の力で治せると思っているからです。
ところが、10年も20年も病気をやってきていい加減打つ手がなくなって来た人は、改善が早い。それは、「自分でできる」という心がなくなり、他者の言葉に耳を傾けるからです。他者の視点を通して自分を客観的に観る力を身に付けた時に、病気を生み出していた自身の本当の姿を知り、治していくことができるのです。

もうひとつ。
ともくんのシェアには、「教えてください、それによって治りたい」という気持ちが表れています。それは、「治りたい」という想いの方が先にあるということです。
そこで大事なことは、これをもらったことによって自分は何を与えられたのか、ということです。実は、すでにいっぱい与えられているんですよ。

例えば、目が見えなくなるのと耳が聞こえなくなるのとアトピーになるのと、どれを取るかというような話なんです。
もしかすると、目が見えなくなったら「アトピーの方がよかった」と思うかもしれません。でも、目が見えない人というのは、目が見える人とは違うものが観えたりします。耳が聞こえない人は、聞こえる人と違うものが聴こえたりする。そういうことだと思うんです。
その病気も実は与えられているものであり、そこから学べることがたくさんある。

だけど、それを学んだからと言って、そのアトピーが改善される保証があるかと言ったら、ありません。今の症状は心から来ていますが、じゃあ心を治したらその症状が消えるんだ、と言ったら、医者の治療と一緒です。
「いただいたものに感謝する」という心があったら、そのアトピーはありがたいものになります。そういう心で進んでいったら、結果として、症状は良くなるかもしれません。でも、たとえ症状が良くならなくてもそれはありがたいものだから、そのまま付き合い続けてもありがたいのです。

ともくんのシェアの文章は、力強い。その力強さと、「僕がこうなれたのはアトピーがあったおかげです、アトピーさんありがとう」という心があったら、あなたは他の人を救えるようになると思いますよ。人はこういう心で生きていけるんですよ、ということを、示していくことができるのです。

ガンになって余命1か月半と言われた人が、ガンと楽しく付き合おうということを全国で講演してまわっていたら、ある時、「とうとうガンが消えてしまいました」と書かれた年賀状が届きました。そうなるには何年もかかったんですけどね。

今与えられているものが不幸なもので、だから心を治してこれを改善したい、その方法を教えてください、と言われたら、僕はこう答えます。
 
「ここは、アトピーの症状を治す方法は伝えられないかもしれませんが、
 アトピーをもらって『ありがたいな』と思える心は伝えてあげられます。」

 
それだけです。
 
 
 


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