木の花ファミリーでは、お墓を持たずに、旅立った魂の遺骨を自然の循環の中に還すということで、毎年大晦日に粉骨式を行い、年が明けると「散骨式~自然へ還るセレモニー」を開催しています。
この取り組みは2021年の暮れから始まり、今年で3回目を迎えました。粉骨式では、木の花ファミリーのメンバーのみならず、メンバーの家族や友人、また、縁あって寄せられた様々な方々のご遺骨を、心を込め、人の手で丁寧に砕いていきます。そうすることで、そこに刻まれてきた人生の軌跡もまた、小さな粒子となっていくのです。
そして年が明けた散骨式では、生前に出会ったことのある方もない方も分け隔てることなく、参列者皆で自然の中にお還しし、魂の旅立ちを見送ります。それは、小さな子ども達からお年寄りまであらゆる世代の人々が、旅立った方々の生きた軌跡が生命のふるさとである自然の循環の中へ還っていくことを感じ、命とは何かを共に確認する、とても温かい時間です。
今年は、年明け早々に能登半島で大きな地震がありました。そして、ガザやウクライナを始め世界各地で終わりの見えない紛争が続き、多くの魂が不遇な死を迎えています。
そのような世界の現状を振り返り、散骨式前日に、ジイジは以下のように語りました。
骨を残すということは、形に執着する原因にもなります。形に執着せず、地球生命生態系の大循環の中に還すことで、物理性もまた大いなる流れの中へと還っていくのです。私たちはこの大循環の中で命を頂き、日々循環を繰り返すことで命をつないでいます。そして、最終的にその命を返上しリセットする段階において、肉体という魂の器を自然に還すことで、一切の形への執着を解きます。それは即ち、魂が宇宙の大循環へ還るという、人が存在することの最終目的に到達するルートを創るということです。遺骨を粉骨して撒くということは、その悟りへの第一段階であり、最も身近にできることです。
旅立つ魂がどこに還っていくのかは、それぞれの魂の修行の結果である精神の位置によって決まります。その一方で、形の世界を生きた証として、私たちはこれまで、形の世界にその痕跡を残してきました。しかし、お釈迦様の旅立ちには、墓もなく、戒名もありませんでした。
人間以外の生き物は、そもそも執着を持たないため、どのような死に方をしても美しいものです。しかし、人間の魂は複雑にできており、執着が多いため、器と魂の存在した痕跡をきれいにしていく必要があります。その後押しを、生き残ったものたちがするのです。その仕組みを知ったものたちが送ることによって、未熟であったものたちにも昇天する機会を与えるのです。
今年は、ご縁のあった六柱のご遺骨が集まりました。その中には、生前の姿を見たことはなく、接したことのない方々もいます。しかし、同じ時を生きたものとしてのご縁によって、そのご遺骨を粉骨、散骨させて頂くことになりました。
そして、視野を広げれば、同じ時を生きて、この物理的世界を卒業した魂は世界中にたくさんいます。そこには、直接出会ったことはなくとも、同じ時に旅立つというご縁があります。世の中がこのように混沌とした時代には、良い旅立ちをするものばかりではなく、不遇な旅立ち方をした魂もたくさんいるのです。
その魂の旅立ちの役割の意味を深く受け止め、現世を生きるものたちがより良い歩みに繋げていくことができたなら、その魂の旅立ちもまた、より善きことへ向かうための意味を表すものに変換されるのです。この物理的現象世界には様々な次元の旅立ちがありますが、その一つひとつを、より善きことへ向かう学びとして受け取っていくこと。現世を生きるものたちの心次第で、旅立ったものの歩みを無駄にしない。そのような自覚のもとに、この散骨式を執り行っています。
こういったことを宗教と見る人々がいますが、これは宗教ではありません。これは、粛々とした時空との付き合いである現象界の、最終段階でのお手伝いです。それを美しくしていくことは、原因と結果により成り立っているこの現象世界において、現在の結果をより良い原因として、次の結果をより良きものへとしていくための当然の行いであり、賢明な者にとっては当たり前のことなのです。そして、なぜそれが要るのかと言うと、人々が未だ悟れていないからです。
これから、まったく新しい人の意識の在り方を開拓していかなければなりません。そういった想いが、考えて出てくるのではなく、自らの中から湧き出してくる。その時に、「本当にそうだ」と思えることが湧き出してくる。これまで一般社会では受け入れられなかったことを理解できる人々が、たくさん現れてきます。なぜなら、私たちは今、そのような時代を迎えたからです。
今回ここでお送りするのは六柱ですが、その方々を代表として、同じ時を生き、旅立ったすべての魂に思いを馳せて送る。そのような自覚をもって、この散骨式に臨みましょう。
同じ時を生きる全ての魂へ〜散骨式~自然へ還るセレモニー【後編】へ