のんちゃんの「ありがとう」の物語

今日は「木の花菜食レシピ」でお馴染みの、キッチンスタッフののんちゃんの物語をご紹介します。

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小学5年生の時に、自分の誕生日にケーキがない、ということがあったの。
私は1月2日が誕生日でしょ。昔だし、田舎だったから、1日に買っておかないとお店が閉まっちゃうの。だけどその年は1日に買うのを忘れていて、2日になってから「あ!ケーキがない!」って。他の兄弟はそんなことないのに私だけ忘れられて、自分は愛されてないんだって悲しくなった(笑)。でも、なかったら自分で作ったらいいなって思って、本をめくって、ロールケーキを作ろうとしたんだ。
だけどロールケーキって難しくてね、結局きれいに巻くことができなくて、ただのジャムサンドケーキみたいになっちゃった。それを「できたよー」ってみんなに食べてもらったら、みんながおいしいって喜んでくれたんだよね。今となってはそれが本当においしかったのかどうかわからないけど、自分がしたことで人が喜んでくれるんだと思ったら、嬉しかった。

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新作のスコーンを焼くのんちゃん

それから、お菓子を作るのが好きになったの。もともと食いしん坊だから作るのも食べるのも好きだったけど、とにかく作るのが好きになった。夜中にも作ったりしてるもんだから、家族から「また作ってるよ」って呆れられたりしてね(笑)。お菓子って、ごはんと違ってあってもなくてもいいでしょ。でもあると嬉しいよね。好きな時に作って、自分の気持ちがそのまま表現できる。そしてそれを食べた人たちが喜んでくれる。そうやってみんなが喜んでくれるのが、嬉しかったんだよね。

木の花に来る前も、カフェやレストランで働いてた。食べることに携わるのが好きなのは、食べものって、食べたら終わりでしょ。それがある意味、いさぎよいなって思うの。ほんと一瞬なのに、その一瞬のためにみんなが一生懸命作ってる。だけど食べたものは確実に血となり肉となり、その人を作っていく。見えなくなるけどその人を作っていくのが、なんかおもしろいなー、って。

そうやって好きなことやって暮らしてて、それなりに満たされてはいたんだけど・・・なんかね、つまらないな、って思い始めたの。
経済的にも、一人で電気とかガスとか使ってもったいないなーって思うし、何より、自分のために生きててもおもしろくなかった。それで、もっとたくさんの人で一緒に暮らせる場所が、どこかにあるんじゃないかって思ったの。
その時はまだエコビレッジなんて言葉も知らなかったし、何の根拠もないんだけど、そういう場所があるんだってなぜか確信してた。それで、ちょうどその頃に何年かぶりに偶然会った友だちに、こういうところを探してるんだって話したら、それなら有名なところがあるよって教えてくれたのが木の花ファミリーだったの。

6年前の体験ツアーで初めて木の花を訪れる
6年前の体験ツアーで初めて木の花を訪れる

さっそく体験ツアーに参加してみて、すごいなー、と思った。だけどなぜか、その時はここに住もうとは思わなかったんだよね。それで、友だちのお母さんがカフェを開くというのでそれを手伝うつもりだったんだけど、その話が頓挫したり、いろんなエコビレッジを見て回ろうとしたら今度は動けなくなるくらいのひどいぎっくり腰になったりして、その時に「ああ、自分はみんなで暮らそうと決めて、そういう場所に出会ったのに、まだ自分の欲で他のことをやろうとしてたんだな」と思って、ここに暮らすことにしたの。そしたら、不思議なことに、腰痛も消えてなくなくなっちゃった。

畑に出られるのが嬉しかった
畑に出られるのが嬉しかった

ここに来て、最初は畑隊だったね。
今までレストランで働いたりして、おいしいものを作る現場にはいたけど、その野菜がどんなところから来ているのかを知らないのが自分自身で嘘っぽいなと感じてたから、いつかは畑をやりたいなと思ってたの。だから土に触れられて嬉しかったよ。
1、2ヶ月くらい経った時にメンバー同士の結婚式があって、キッチンに人が必要になったので入ってねと言われた時には「えーっ」という感じだった(笑)。
それからは、ずっとキッチンスタッフとしてやってきて、今に至ります。

毎日キッチンでお料理してて・・・飽きないね。ほとんど同じことしてるのにね。何で飽きないんだろうね。やっぱり、同じようで、同じことはしてないんだろうな。毎日、何かしらいろんなことが起きてるもんね。
   

ここに来て、自分の何が変わったか ――――― ?
   

一番変わったのはね・・・

(涙で言葉が止まる)

感謝ができるようになったことかな。
   

なんか、私、自分がここで生活してて、人に伝えられることって本当に何もないんだけど・・・
ただ、感謝のことしかないな、って。

ここに来る前も、言葉としては「ありがとう」ってよく口にしてたみたい。お家が何か商売してるんですかって聞かれたこともあるくらい。
自分でも、自分は感謝してるんだって思ってた。生きてることが好きだったし、幸せだと思ってたし、ありがたいなって思ってた。だけど、私は「ありがとう」ということが全然わかってなかった。

2年前の木の花祭りの時に、みんなが自分の過去を振り返るということがあって、私も本当の自分の姿と向き合うために、いさどんにたくさんエネルギーをかけてもらった。あの時に、教えられたの。
ちょうどこんな冬で、夜に空を見上げたら、星がぶわーって、いっぱい浮かんでた。その時に、自分もあの星の一つのように生かされてるんだ、って思ったの。そうしたら、本当の意味での「有り難い」ということの意味が、わかったんだよね。

何でかわからないけど、「ありがとう」ということへの見方がまったく変わったんだと思う。
それまでは、自分が生きてること、自分が幸せなこと、自分から見た視点で、ありがたいなって思ってたの。だけどその時は、夜空の星から見てた。あの星も自分なんだ、と思ったら、そこに存在しているということがすごく貴重で、生かされているんだってことがわかって、本当に、ありがたかった。

でもね、その「ありがたい」につながるためには、本当の自分を知ることが必要なんだと思うの。自分がこれまでにしてきたことを一つひとつ振り返って、自分がどれだけ愚かだったかを知ったことで、そういう自分もここに生かされてるんだ、ってことがわかったら、もう、感謝しかなかった。生かされていることへの感謝。
そして、そういう自分もこの宇宙の一点をつくってるんだ、って思ったら、責任感というか、なんだか背筋が伸びたのを覚えてる。
   

今、キッチンで心がけてるのは、感じること。野菜とかお米とかに、どうしてほしいかなって聞く。わからなければ、みんなに聞く。

130728-112746野菜を見てると、おもしろいよ。今日もキッチンでわたるくんと話してたんだけど、大根てあんまり主役にならないよね。大根ステーキとかもできるけど、今夜は大根ステーキだよって言って「やったー」って喜ぶ人もあんまりいないしね(笑)。だけど大根おろしとか、大事な役割があって、いろんな使われ方がある。なんか、人間見てるみたいだよね。

よく主役になる野菜もいればならない野菜もいて、同じ大根の中でも本当にいろんな形があるよね。特に自家用でキッチンに届くのは個性的な形が多いから(笑)、みんなで「これ見てー」って笑って、この子をどうにか生かそうって考えたり。
野菜はそういう役割として、人間が使いたいように使われてるんだね。決して文句も言わずにね。それでみんなが食べたら、「ありがとう」って言って、体の中に入っていく。

今思ったんだけど、野菜って人間みたいだなと思ってたけど、私たちも、神さまに使われる野菜みたいだね。使ってくれてありがとう、って。

何を作るかを決める時に、前は本とかを見て、ちょっと変わった料理とか、味がおいしいといいなとか思いながら選んでたんだけど、そういうのも、今はないね。今はどうやって決めるかというと、まずみんなが食べたいものでしょ。それから、たくさんある野菜をどう使うか。

あとはね、きっと、その時、その野菜に、「これになりたい」っていうのがあるんだよ。
りょうちんが木の花祭りの鬼の面を作っていて、実はもう作る前から面の完成形は決まっていて自分はそれに沿っていくだけだって話してたけど、野菜にも「これになる」っていうのがあるんだと思う。

今ね、自分の頭で考えてメニュー決めてること多いなって反省した。
神さまにとって人間が野菜だったら、野菜にとって人間は神さまだよね。それなのに、この子はこうやったら一番活かされるっていうのを、野菜と対話をしないで勝手に決めたら、台無しにしちゃうよね。
きっと、ただ相手を感じて、何も考えずに野菜を洗ったりしてると、どうしたらいいかが自然と湧いてくるんじゃないかな。
 

――――― 最後に一言?

そうだね・・・・自分が活かされてないって思う人は、感謝が足りないです。
自分がこの世界に生かされてることがわかったら、そういう気持ちで生きていたら、きっと自然とその人らしく活かされていくよね。

私も、感謝が足りないことがわかったからって足りるようになったわけじゃなくて、まだまだだけど、でも、それをここで積み重ねていけるようになったのが、本当にありがたいなって思ってます。
 

料理をする時、一番思うのは、やっぱりありがとうの気持ち。喜びの気持ちです。
ありがとうございます。
  

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2年前の夏、富士山にて

   
 


One thought on “のんちゃんの「ありがとう」の物語”

  1. のんたん、素敵なお話、涙が出たよ。のんたんが幸せに暮らしていて(しかも、家から近い?富士宮で!)、とても うれしいです。

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