アブラムシについて(わたわた)

今年は、ハウスのトマトの温室コナジラミやアブラムシに対して、土着天敵だけでなく、それを補う微生物資材などをつかってみました。
トマトに関しては、かなり被害を抑えることができました。現在、イチゴの無農薬高設栽培を今年から始めてやっているのですが、アブラムシがなかなか抑えられないでいます。今日、土着のアブラバチがいるハウスからアブラバチに帰省されたアブラムシのマミーをかなりイチゴハウスに導入したのと、そこに生やしてあった大根にも天敵がいたのでそれを移植。てんとう虫、ヒラタアブの幼虫なども移入しました。その上で、さらに、コレマンアブラバチを購入してダメ押しをしようと思ってます。また、イチゴのハウスには、ところどころ、麦と大根が天敵の住処をつくるために蒔いてあります。イチゴもトマトの件もわたわたに相談をしながら進めていますが、今日、ブログでアップしてくれた内容があります。それがとてもよくまとまっているので、シェアします。いつも勉強になります。ありがとう。
 
■以下、わたわたのブログからわたわたが寄稿してくれました。
アブラムシは作物栽培で最も初歩的な害虫だけど、天敵がある程度定着しているような安定した生態系を整えていっても、最後まで随所随所で出てきて悩みどころになる虫さん。作物自体がある程度健康だと問題にならないことも多いけれど、ちょっとした管理ミスや悪天候などで作物が体調を崩すと一気に増殖して、そこそこ健康だったものにまで繁殖し出すと手がつけられなくなったり、葉が奇形になったり、ウイルスが感染するなどして作物の回復が著しく困難になってしまうことも多い。普通の農家さんでは、農薬で防げていることが多いのだけど、農薬とて万能ではなく、短期の対策として考えても作物が不調に陥っていると、農薬をかけてもかけても増殖が止まらないとか既にウイルスに感染してしまって手遅れなんてこともある。作物生理や生態系を全く考慮せずに農薬だけで密度を低く抑えようと思うと、かなり的確な薬剤撒布が必要で、しかも特定の卓効を示す薬剤に対して薬剤抵抗性が発達しないように注意していく必要がある。安価な古い農薬にはアブラムシに有効なものが多いのだけど、古い時代の農薬は天敵も殺してしまう非選択性のものが多くて、防除が生態系を不安定にする要因をつくってしまうというスパイラルに陥る。初めは効いた農薬が効かなくなる、使う量や頻度が増えていってしまうのは、アブラムシが示してくれる作物の健康の変化に気付かなくなり、アブラムシが好む作物の生理状態を放置し、さらにアブラムシ自体が農薬に強くなったり、アブラムシの増殖を抑えていた生物のつながりを壊してしまうから。とりあえず農薬を撒いておけば、作物が不健康であってもアブラムシが増えないから、作物管理が細やかでなくなる。その上で自体を悪化させる結果を持つ手段を唯一の対策として頼ってしまうっていうのは、あまり賢いやり方ではないだろう。

農薬の害はそれ自体の毒性のことよりも、作物と向き合う姿勢、作物生理や作物生育を成り立たせている生き物の世界を気遣えない農業を生み出すってところにあるのではないかと思うし、悪循環に陥る手段に頼り切ってしまうのは好転する可能性を自ら断ってしまうってことであり、それを考えもせずに使い続けてしまう農業界でいいのか人類ってことだと思う。最近は特定の害虫にだけ効く選択性農薬っていうのが主流になってきているので、かつてよりはむやみに虫を殺さないので少しはましになっているのだけれど、その少しはましってどういうことなのか、結局生態系を意識しなければ化学物質だけで農業は出来ないってことが多くの農業者に正しく伝わらなかったら、やっぱり自分の圃場の自然をちゃんと観察して農業を営むっていう姿勢は育たないのではないかな。農薬をつかわなければいいって単純な話ではなく、自然の営みの1つである農業として、当たり前の考え方をしましょうってことなんだけどね。

さてアブラムシについて。 微生物農薬は悪循環に陥りにくく、使い方によっては耕地生態系のバランスを作物が健全になる方向に回復させる手段になりうる方法の1つで、ペキロマイセス・テヌイペス菌(ゴッツA)とボーベリア・バシアーナ菌(ボタニガードES)はアブラムシに感染して虫の体をカビさせる微生物(糸状菌)。感染して死んだ虫から胞子が放出されるので、うまくいくと次々とアブラムシに感染が広がって、アブラムシ密度が低く維持できるようになる。全滅まではしなが、大量増殖しなくなる。多くの天敵生物には殺虫効果がないので、アブラムシが大発生しそうな状態になったときはとても有効と言える。

作物の健全育成、作物の生理状態を健康に保ち、耕地生態系にも天敵やただの虫がいっぱいいて、アブラムシが代増殖しにくい環境をつくることを前提にして、もしアブラムシが大量発生する兆しがあるときに利用するとしたら、より安定してアブラムシを含む害虫密度が低く維持できるだろう。予防的に使っても良いのだろうけど、天然の寄生蜂やテントウム、ヒラタアブ、クサカゲロウなどがある程度いて、アブラムシがいても増殖していかないことが明らかなら、これらの薬剤は切り札としてとっておいても良いだろう。切り札があるっていうのは、周囲から害虫が飛び込んでくる畑の位置環境や昨今の不安定な気象条件のもとでは有効な手段だと思う。

しかし(しかも?)、この切り札には弱点もあって、低温や乾燥する条件では、菌を撒布してもアブラムシに感染できない。天然の天敵や作物自体の健康さで安定を目指しつつ、非常時に奥の手として使いたいところだけど、条件によっては使えないときがある。これからの季節なんかはかなり微生物には不利ってことになる。
そうなると、微生物系が使えない場合は、天敵生物資材が良いのだろう。コレマンアブラバチ(アフィパール)とショウガクタマバエ(アフィデント)っていうアブラムシに寄生する生物が市販されている。低温期はコレマンアブラバチ、高温期はショウガクタマバエの方が働きが良いらしい。これを放飼して圃場で増殖させる。天然にもこれらの生物はいるけれど、アブラムシが増えないと増えないので、天然の増殖を待っているとアブラムシによる実害が出てしまう。なので、市販のこれらの生物を放して、一気に密度を上げてしまうように一斉にアブラムシに寄生させる。バンカープランツなどを使って餌となるアブラムシを養って、土着天敵を増やす策をとれば、購入天敵はそのうち土着の天敵と区別着かなくなるかもしれないが、要は安定して天敵が定着して、アブラムシの大量増殖がなくなればいいので、そうやって定着・増殖させる方法を併用すると良いだろう。

切り札微生物にも弱点があったり、天敵も天敵自体の生態や棲息環境に配慮しなければならなかったり、今までの化学農薬に比べたら面倒くさい。でもそれがミソだろう。効果が出るように作物や周辺環境を観察し、それを前提にして働く仕組みっていうのは自然界そのもの。そうやって条件をつくりあい支え合って生きている。作物も人間もその一員だもの。そのことを共感して作物に向き合えるようになると、細やかな気づきが生まれ、作物に合わせた管理が出来るようになると思う。意識が作物を育ててるって段階への入り口になるのかなって思う。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です