今日は、わたわたからの投稿です。
木の花ファミリーでは、いくつかの作物で自家採種のタネを使っており、ニンジンもその1つです。
ニンジンは、炭素循環農法を参考にした緑肥エン麦を使った無施肥栽培がうまくいくようになってきましたが、
同時にその栽培方法に適した品種を作ろうと自然農法センターの「筑摩野五寸」を素材に、
木の花ファミリーオリジナル品種の育成に取り組んでいます。
昨年秋にみんなで母本選抜して採種圃場へ植え付けたニンジンが5月中旬頃から開花しました。
[写真]ニンジン開花期
開花から一ヶ月経ち、満開を過ぎたので今日は整枝作業をしました。
[写真]ニンジン開花後半
ニンジンの花は、天花(てんばな)と呼ぶ中心の大きな花蕾が最初に咲きます。
[写真]ニンジンの花クローズアップ
この天花の一ヶ月後が
[写真]ニンジン開花終わってタネが付いている花蕾
こんな感じ。
だいたい一ヶ月で天花とそれに準じる大きな花が咲き終わり、種子が熟し始めます。
このタイミングを見計らって、まだ開花を続けている小さな花蕾を切り落としてしまいます。
すると、栄養が既に登熟に入っている種子に集まり、大きくて力強い生育をする充実した種子に仕上げることができます。
とはいえ、この作業。花はたくさんあるので、なかなか全部落としきれるものではないのです。
枝がこみあっていたり、花蕾の大きさが中庸で落とすかどうか迷ってしまったりとそうそう理屈通りにはいかないもの。
また、この時期は時間もニンジンにかけられないので、ついつい小さな花を残してしまいます。
しかし、実はそれがいいのです。
切り落とし損ねた花蕾からは、充実の悪い小さな弱いタネがとれます。発芽しない屑タネも入ります。
すると、得られた種子集団には、充実したタネと弱いタネと屑が混ざっていることになります。
この混ざりダネを播いたとき、充実したタネとタネの間に、適度に弱いタネや屑が入ることによって、
充実したタネ間の距離が適度に保たれ、強い芽生えと弱い芽生えが適度に配置されて、
初期生育に序列のあるニンジン集団が形成されます。
最初から混み過ぎず序列がはっきりしていると、間引きが楽にできるのです。
弱いタネたち由来の個体は、充実したタネ由来の個体の生育を助けながら、自ら弱っていって、間引かれる運命になっている。
こうして集団としてニンジン栽培という環境に適応するのがニンジンという作物の生き方であると言えるでしょう。
だから、ニンジンのタネまきは『屑ごとやや多めに播く』というのが、ニンジン本来のタネ播き方法なのです。
種苗会社の高価なタネでは、ゴミや屑を売るわけにはいかないので、充実したエリート種子ばかりを精選してパッケージされており、これを自家採種したニンジンと同じようにたくさん播くと、みな同じ大きさの個体だらけになって、間引きがしにくくなります(こういう場合は薄播きや点まきが向いていますね)。
タネの善し悪しというのは、発芽力だけではなく、タネ自身が持っている生育全体・栽培全体の中での役割から判断すべきなんだなって思いました。
またタネの構成から、適切な栽培方法(タネまき密度)っていうのが決まってくるのも面白いですね。