かぶを切ってもありがたい

今木の花に滞在しているひろちゃんは、北海道のニセコ在住です。木の花に行くととにかく幸せな長女のしおりちゃんを見て、自分もそれを味わいたいと思い、京都にいる息子さんに会いにいった帰りに寄って下さいました。

15年おひとりで和食カフェを切り盛りしてきたひろちゃんは、早速厨房でみんなと楽しそうにお昼御飯の準備をしてくれています。

「しおりのために来たと思っていたら、実は自分のためだったんだと気づいたの」と嬉しそうに話すひろちゃんにお話を聞いてみました。

「サラダ用にかぶをくし形に切るように言われて、切っていた時にね。通りがかったえいこばあちゃんが、『これ何にするの?』と聞いてきたから、『サラダ用です』と答えたら、『そうやって繊維に沿って切るとかたいから、繊維に対して直角にして繊維を壊すほうが、食べやすいよ』とアドバイスしてくれました。

でも、正直言って最初、『何だろうな?』とむっときたの。しおりからのアドバイスで、自分の我を捨てて、郷に入れば郷に従えということで、言われた通りにしていたつもりなのにって。実は、私の主人が歯医者なので、歯並びや顎を鍛えるために、お料理をする時には繊維を活かして、かたいものを出すことがいいことだってずっと信じてきた。それで、今までカフェのお客様も何もおっしゃらなかったし。

でも、これって自己満足だったんじゃないのかなって気づいたの。お客様の中には、歯の悪いひとも、歯のない人も、今思い返せばいらっしゃった。そう思うと、実は私の出したお料理がかたかったんじゃなかったかなって。ひとりひとり、お客様のことを想ってつくることが、本当は大事だってことに、今日かぶを切ることで気づいたの。

もう、今回来た目的を達成した気分です!」と晴れやかな笑顔で話すひろちゃん。

そんなひろちゃんの今一番の悩みは、しおりちゃんとの親子関係。ひろちゃんは、家族でコミュニティを立ち上げようとしているのですが、しおりちゃんから、「我を置いていかないと、コミュニティはできないよ。私もまだ無理だけど、お母さんも今のままだと無理だよ」と言われているそうです。

「しおりが本当に私のことを想って、私にこれからの人生を幸せに生きていってほしいというのはよくわかるの。いつもがむしゃらに働く私に、『お母さんは、生かされているのではなく、自分で生きているよ』としおりが言うのも、もっともだって思う。でも、自分の中に親だから子供の上に立ちたいという心があって。他のひとに言われるのはいいけれど、自分の子供だけには言われたくないって心があってね。しかも、しおりは親子の遠慮のなさからずばっと言ってくるので、どうしても反抗してしまうの。」

その日の夜、いさどんと親子関係について相談する機会を得たひろちゃん。いさどんから、

「これは、親子の問題ではなくて、あなたの問題ですね。あなたがこれから、どういう意思を持ってどう生きていくのか。親子の区別も兄弟の区別もない、平等な関係を築いていければ、新しい家族像を社会に示すことができるでしょう。これからは人生の仕上げとして、共に人生1年生の気持ちで取り組んでいきましょう!」

という、いさどんの暖かい励ましを受けて、ひろちゃんは、

「本当に心が軽くなりました!ようし、これから生まれ変わるぞーー!でも、もっと早くに、いさどんと出会っていればよかった。」

それに対していさどんは、

「それは、欲深な心ですよ。この世界は、本当にありがたいしか言いようのない世界です。本来ストレスも不満もなく、問題事と思うことすら、完璧にふさわしくあなたに与えられています。自分でそれを選んで生まれてきています。本当にありがたい、ありがたい、それだけなんですよ。」

目に涙を浮かべながら、深く頷いているひろちゃん。ありがたい人生のスタートが、今切られましたね。

心のかべをひとつ乗り越えたひろちゃん。切ってもらっているレタスさんも嬉しそうです。
心のかべをひとつ乗り越えたひろちゃん。切ってもらっているレタスさんも嬉しそうです。

2 thoughts on “かぶを切ってもありがたい”

  1. こんばんは、木の花 のみなさん。お久しぶりです。アーチです。
    ようこさん、暖かくなるストーリーをありがとうございます。

    しおりさん親子にはこちらでお世話になっています。親子の問題は誰にでもありますよね。
    僕の母親はちょうど1年前に亡くなり、子供としてちゃんとした関係は築けなかったけれど、
    亡くなってはじめて母親の大きさを実感しています。また今年は本当に静かに静かに自分と対話
    することができたかなって思います。

    今日はニセコから東京に戻る日。家の前は積雪10cmぐらいかな。また機会があれば遊びに行き
    たいと思います!ありがとうございました。

  2. アーチさん、お久しぶりです♪
    静かに静かに自分と対話されていると聞いて
    なんだかうれしいです。

    亡くなられていたとしても、
    お母さんとの縁は深いものですよね。
    そしてその絆はどこまでも深くなるものだと思っています。

    また、いつでも帰ってきて下さいね。
    みんなで待ってます!

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